③④
* * *
(そんなに怒らなくたっていいのに……)
メイジーは頬を膨らませながら貝の口を開き、色別に分けていた。
ガブリエーレに食事を食べさせろと、理不尽な命令をされた時のことを思い出す。
フルーツを口に入れたところまではよかった。
次のフルーツを口に運ぼうとしたところで、ガブリエーレは種を唇で挟んでいたのだ。
そのフルーツの種が真っ黒で丸かったことでメイジーはあることを思いつく。
(この種……真珠の核にちょうどいいんじゃないかしら!)
メイジーもこの果実を食べたことがあるが、とにかく種が鉄のように固いのだ。
島民たちはこの種のせいで、歯が折れたこともあるらしい。
メイジーはガブリエーレに馬乗りになりながら彼にグッと顔を近づけた。
目を凝らしてみると、やはり核にピッタリだと思った。
メイジーは彼の唇に親指と人差し指で挟むようにして種を取った。
そして上半身を起こしたメイジーは空に種を掲げる。
(やっぱりいい形だわ! 試してみる価値はあるんじゃないかしら)
キラキラした瞳でフルーツの種を見つめていたメイジーは、この種を大量にもらいに行くために立ち上がる。
走り出そうと背を向けた瞬間、引き止められるようにして手首を掴まれてしまう。
メイジーは今すぐに駆け出したかったのに、それを止められたことが不満だった。
「もう、なに!?」
『……それはこちらのセリフだ』
かなり不機嫌なガブリエーレを見て、自分がしていたことを思い出す。
(あっ……食べさせろって言われていたんだったわ)
動き出した気持ちは止められそうにない。
今すぐに種をかき集めたい気持ちを抑えて、メイジーは仕方なくその場に座る。
再びフルーツを手に持ち、作業を再開するがガブリエーレの世話は上の空だ。
(早く実験したい……っ! これがどうなるのか、どのくらいの時間がかかるのかしら。真珠の色はちゃんとでるの?)
はやる気持ちを必死に押さえていた。
気付かないうちにグイグイと食べ物を押し込んでいたようで、ガブリエーレの口の周りにベチョベチョと果汁がついてしまっているではないか。
『…………お前、いい加減にしろ』
「え……?」
『痛いんだよ』
「あっ、ごめんなさい! 考え事をしていて……」
メイジーはガブリエーレの口元を柔らかい葉で拭う。
『そんなに面白いのか?』
「……え?」
『網作りと貝集め』
ガブリエーレがメイジーのことを気にするとは珍しい。
それにここ数日のメイジーの行動をすべて把握しているではないか。
(……どうしてわたくしのやることを気にするのかしら)
そう考えてメイジーはある考えに辿り着く。
「もしかしてあなたも貝を取りたいの?」
『この俺がそんなことをするわけないだろう? 馬鹿が』
「…………」
ナチュラルに暴言を吐かれたメイジーは頬を膨らませていた。
『俺はお前の目的を聞いている』
「……え?」
『貝で何かをするつもりなのだろう?』
ガブリエーレは楽しそうに唇を歪めている。
メイジーは彼に話すか迷っていたが、これからの目標をガブリエーレに聞いてもらい、自分を追い立てていくのもいいかもしれない。
(絶対に馬鹿にされるでしょうけど、それを起爆剤にやってやるわ……!)
そう思ったメイジーは口を開いた。
「これを丸くして宝石と同じようにアクセサリーにして販売できないかと考えているの」
『ほう……だが一体どこに?』
ガブリエーレがそう思うのも当然だろう。
実際、メイジーはここがどこなのかまったくわかっていない。
だが、メイジーはガブリエーレにシールカイズ王国に復讐するために宝石になり変わる真珠を売りたいと話す。
そのためにスリーダイト帝国で地盤を築いていきたいと語った。




