②⑥
「どうしてわたしは……こんなところで寝てしまったの?」
『お前……何も覚えていないのか?』
ガブリエーレの問いかけにメイジーはすぐに今まであったことを思い出そうと首を捻る。
そして記憶が蘇った瞬間、彼に掴み掛かるようにして問いかけた。
「──ムーは!? ムーは無事なのっ?」
『……おい、離せ』
不機嫌そうなガブリエーレの顔を見てメイジーは正気に戻る。
だが彼女の無事が気になって仕方がない。
メイジーは掴んだ胸元から手を離して、ガブリエーレの言葉を待っていた。
『子どもは無事だ』
「…………!」
それを聞いてメイジーはホッと息を吐き出した。
安心して体から力が抜けてペタリとその場に座り込む。
「よかった…………無事で」
『俺が救ったんだ。当然だろう?』
「……あなたが? どうして?」
首を傾げたメイジーに苛立つ様子を見せるガブリエーレ。
説明を求めたが、彼はそれ以上何も言うことはなかった。
極めつけは『お前がいなければもっと早く救えた』と言われてムッとする。
「どういうこと?」
『お前が余計なことをしなければよかったんだ』
恐らく彼は何らかの方法でムーを救えたのだろう。
メイジーは反省するように瞼を伏せた。
「ごめんなさい。わたしのせいで……」
『…………』
反論してくると思っていたのかガブリエーレは驚くように目を見開いた。
確かにあの時、メイジーがうまくムーを救えなかったせいなのかもしれない。
正座をしていたメイジーは太ももの上で手を握り込む。
『まぁ……お前がいなければあの娘は体を強く打ちつけて死んでいた。少しは役に立っている』
「……え?」
『…………言っておくが少しだからな』
ガブリエーレの予想外の言葉に顔を上げた。
(まさかフォローしてくれたの? そんなわけないわよね?)
メイジーが顔を上げると、ガブリエーレは顔を背けてしまう。
『傷だらけだな……』
「誰が?」
『……お前がだ』
そう言われて初めて、メイジーは自分の状態を確認する。
擦り傷に打ち身。
葉が巻かれているところが特に痛むため、ひどいことになってしまうのだろう。
(うぅっ、傷口を見たくない……!)
そんな時、ふんわりと香る食事の匂い。
メイジーのお腹がギュルギュルと音が鳴った。
こんな状況でも空腹になるというのは皮肉なものだ。
メイジーが匂いの元を探すと、いつもより豪勢な食事が目に入る。
『島の者たちからだ。あの子どもを助けたお礼だそうだ』
「……!」
島民たちの感謝がここに詰まっているのだろう。
メイジーが食事を頂こうと手を伸ばした時だった。
『主に俺に対してだけどな』
「…………」
いつもの調子に戻ったガブリエーレを睨みつけた。
つまり助けたのはメイジーではなく、ガブリエーレだと言いたいのだろう。
たしかに最終的にはガブリエーレに救われたのは事実だ。
だからこそ何も言い返せなかった。
『それから今日はここで寝ろ』
「え……? ま、まさか……!」
『…………』
メイジーは腕をクロスして自身を守るように胸元へ。
顔を歪めながらガブリエーレを見ていると、彼は舌打ちをしながら理由を説明した。
『何を勘違いしているのか知らないが血の匂いが強過ぎて獣が寄ってくるからだ』
「ああ、なるほど!」
『チッ……』
そう言ってパンを手に取ったメイジーは勢いよくかぶりつく。
昼は何も食べておらず、体力を使ったためかお腹がペコペコだった。
ガブリエーレを無視して食べ進めていた。
彼もメイジーと同じものを手に取った。
食事を終えると、先ほどまで寝ていた葉に横たわる。
ふとガブリエーレが口を開く。
『お前は……』
「何?」
『…………何でもない』
珍しく言葉を濁したガブリエーレにメイジーは首を傾げた。
深く追及することもなく瞼を閉じる。
すぐに寝息を立てたメイジーを見ながらガブリエーレが口を開く。
『メイジー……お前は死にたかったのか?』
その言葉と共に冷たい夜風が吹き抜ける。
ガブリエーレは近くにあった葉をメイジーにかけた。




