①⑥
メイジーは頭を抑えながら体を起こした。
なんだか顎下辺りもヒリヒリと痛むような気がした。
『俺が国に帰るまでの暇つぶしになれ。役に立てよ、メイジー』
すると気を失う前の記憶が蘇ってくる。
(あの男……偉そうにっ! 何が暇つぶしよ! まるでどっかの王様ね。性格悪いわ)
メイジーは心の中で暴言を吐きまくっていた。
暇つぶし、役に立て、そう言ってメイジーの額に手のひらが触れた時のことを思い出すとズキリと額部分が痛む。
メイジーは苛立ちを感じつつ、顔を上げると……。
『生け贄、返された。ガブリエーレ様、気に入らない』
『コイツ、海、捨てる?』
『捨てない。ガブリエーレ様、殺すな、言った』
目の前にいる島民の女性を見つめながら、メイジーは目を見開いた。
(どうして言葉が通じるの……? さっきまで何を言っているかわからなかったのに)
メイジーはそう思いハッとする。
先ほどの言葉と頭の痛み。
ガブリエーレが島民たちと言葉が通じていたように、メイジーにもそうしてくれていたのだろうか。
でなければ辻褄が合わないが、あの意地悪そうなガブリエーレの顔を思い出していると、そんなことをするように思えない。
(でも……やっぱりそうよね。急に言葉がわかるなんて、なんだか魔法みたい)
魔法と聞いてメイジーはあることを思い出す。
シールカイズよりずっと北にある広大な大陸。
スリーダイト帝国には魔法が当たり前のように使われているらしい。
その帝国を支配している皇帝は人間離れした美しい容姿と、まるで神のように強い力を使うという。
もちろん部屋にメイジーは行ったことはないが、ジャシンスが外交に行った際に大興奮でその話をしていた。
ジャシンスは皇帝を見ただけなのだそうだが、今でも度々名前が出るほどだ。
噂では魔法を使えないシールカイズ王国を見下していると聞いたことがある。
何故、圧倒的な力を持つスリーダイト帝国がシールカイズ王国を手に入れるために動かないのか。
それは今の皇帝がまったくシールカイズ王国に興味がないからだと言われている。
つまり手にしようと思えば一瞬なのだろう。
ジャシンスは父と母に頼んで、妻にしてもらおうと結婚の申し出をしたそうだが返事はこない。
ジャシンスは望みがあると思っていたらしいが魔法も使えず、小国の王女と結婚するメリットがまったくといっていいほど思い浮かばない。
この件でジャシンスは女王となり、皇帝と結婚することを諦めるしかないのだろうが自信がありすぎるのも考えものだ。
(島流しされたわたしには関係ないけど……)
今はそれどこれではないと気持ちを切り替えた。
どうやらメイジーは随分と失礼なことを言われていたようだが大切なのはこの人たちとの言葉が通じるか、である。
(やっぱり生け贄にするつもりだったのね。で……それが返されたから困っていると)
メイジーは恐る恐る口を開く。
「あの……」
『どうする? 長、報告する』
『する。あとガブリエーレ様、料理、少し食べた』
『いつもフルーツだけ。今日、違う』
「ちょっといいかしら?」
『『『……ッ!?』』』
そう声をかけると、島民たちは化け物を見るような目でメイジーを見ている。
『言葉、通じる! なぜ』
『おかしい! おかしいっ!』
その場でメイジーを指をさしながらブンブンと腕を振っている。
彼女たちの表情は焦っているように見えた。
(よかった……! 言葉が通じるのね!)
メイジーは安心感から息を吐き出した。
こんなに言葉が通じて安心することはない。
混乱する彼女たちに考えていると、その声を聞きつけて島民たちがやってくる。
女性たちはメイジーと急に言葉が通じるようになったことを説明しているようだ。




