①②
彼らに何かを訴えかけられているのはわかるのだが、メイジーには言葉を理解することはできない。
今だけはガブリエーレに訳してもらおうと思ったが、彼は魔法みたいに一瞬で消えてしまった。
あれだけ啖呵を切っておいて今更、彼を頼ることなんてできはずもないと思い直す。
恐らくもう彼らに茹でて食べられることはないはずだ。
なんとか彼らの言っていることを理解しようとするものの何一つわからない。
翻訳アプリがこの世界にあるはずもなく、メイジーがどうするべきか迷っていた時だった。
──ギュルルルッ
メイジーのお腹が凄まじい音を立てて鳴った。
あまりの音の大きさに島民たちも唖然としている。
それと同時に喉が渇いて仕方ない。
三日間、満足に食べられなかったことや飲み物が少なかったことで再び体が重くなっていく。
(何か食べ物を……いや、飲み物だけでも。だけど言葉が通じないのなら何も言えないわ。それに役に立たないと……!)
緊張が少し解けたことで体が限界を訴えかけてくる。
先ほど食べられそうになっていたのに、自分の方がお腹が空いて仕方ない。
メイジーは恥ずかしさとこれ以上どうすればいいのわからない絶望感から額を押さえて俯いていた。
(どうすればいいの!? これ以上、わたくしはどうしたらいいのよ……!)
一難去ってまた一難。
試練が続きすぎて心が疲弊する。
海の上で流されないようにとろくに眠れなかったせいか、精神的にもギリギリの状態だ。
ここで気絶するわけにはいけないとなんとか意識を保っていた。
(ジェスチャーで伝えるのはどうかしら……食べたい、飲みたいだったらどうにもなるわ)
とりあえずは食べ物と飲み物を貰えるか、頼むだけ頼んでみようと思ったメイジーが覚悟を決めて顔を上げた時だった。
いつの間にか女性の島民に囲まれていることに気がついた。
ちなみに先ほど食べられそうになっていた時は男性たちがメイジーを囲っていた。
女性は大人から子どもまでガブリエーレのように肩から布を巻いている。
「えっと……」
「メェー、ルゥ?」
「メェー」
「……………」
「メェー、メェー」
「ポップ、メェー」
ポップ、は先ほども聞いたのだが、メェー、ルゥは初登場だ。
メイジーがその場でどうするべきか迷っていると、一人の女性に腕を引かれる。
「ちょっと……どこにいくの! ちょっ……待って!」
すごい力で腕を引かれて、メイジーは森の奥へと移動していく。
後ろからゾロゾロとついてくる女性の島民たち。
道なき道を進んでいくと大きな穴に大きな石が敷き詰められているのが見えた。
一般家庭にある浴槽ほどの大きさだ。
その中には水が溜まっている。
(もしかしてこの中にわたしを入れるのかしら……そんなわけないわよね)
まさかと思っていると、メイジーはそのまま穴の中へと入れようとしているではないか。
なんとか抵抗しようとするものの、力が出ずにされるがままである。
メイジーが首を横に振って嫌だとアピールすると、彼女たちは穴を指差して訴えかけるように言った。
「ルゥ!」
「ルゥ、ルゥ……!」
どうやらルゥとはこの穴の中に入ることを指すらしい。
結局、引き摺られるようにしてメイジーは穴の中へ。
浴槽に浸かるようにして座る。
(でも鍋の中に入れられるよりマシだわ。水も普通に冷たいし、石がゴツゴツとして体に当たると痛い……今から何をするつもりなのかしら)
メイジーが彼女たちの行動の意図を探ろうとしていた時だった。
奥に見えたのは、恐らくメイジーを煮ようとしていた大きな鍋だ。
(……あれ? もしかしてさっきの続きをここでするということ?)
メイジーの体から冷や汗が吹き出す。
しかし着々とこちらに近づいてくる大鍋にメイジーが悲鳴を上げて抵抗しようとした時だった。




