①①
『まぁいい……お前たち、武器を下ろせ』
「……え?」
ガブリエーレの予想外の言葉に驚いていた。
島民たちはガブリエーレの言葉は通じるようで指示に従って武器を下ろす。
その顔はどこか不満そうに見える。
メイジーはジッと彼を見つめていると、彼も見つめ返してくる。
端正な顔立ちに思わず見惚れていると……。
『ちなみにお前の船はどこかに流されていったぞ?』
「……え?」
『縄で繋ぎもせずに、ボロ船を放置して崖を登ってきたのだろう?』
「あっ…………」
ガブリエーレの言う通りだった。
メイジーは小さな船を放置して岩に飛び移り、根性で登ってきた。
そこでガブリエーレに出会って、そのまま気を失ったのだ。
『どうやって生き残り、この島から出るんだ?』
「…………っ!」
ガブリエーレはまるで値踏みされているようだった。
船がなければこの島から出ることはできない。
その上でどうするつもりなのか聞いているのだろう。
それよりもメイジーはずっと気になっていることがあった。
(この人……なんだか偉そうで腹立つわ)
上から目線の態度と人を試すような視線。
舐められているようで腹が立つ。
(島で神のように崇められているなら仕方ないけど……仕方ないけど、なんだか腹立たしいわ)
メイジーは今、島民たちの食料になりかけている。
どうすれば食料ではなく人として見て貰えるのか。
考えた結果、ある答えに辿り着く。
「この島でわたしが役に立つって証明してみせるから!」
一歩足を前に踏み出して胸に手を当てて叫んだ。
自分が役に立てることを証明できれば食べられずに済むかもしれない、そう思ったからだ。
(ここの文化はあんまり進んでない。わたしの持っている知識が少しは役に立つかもしれない……)
一人だけ雰囲気の違うガブリエーレを除けば、だ。
彼がどんな立場なのかは知らないがメイジーにはまだよくわからない。
けれど生き残るためならなんだってやる。
『ふーん、面白い。なら、やってみろ』
「……!」
ガブリエーレの唇が綺麗に弧を描いている。
『おい、お前たち。こいつは役に立つから殺すな』
そう言うと、島民たちはものすごく残念そうに武器を下ろしている。
メイジーは体の力を抜いた。
ただ命の危機が過ぎ去ったことが理解できたからだ。
(た、助かったの……?)
ホッと息を吐き出した時だった。
『言葉も通じないのに、どうやって役に立つのか見ものだな』
「…………!?」
たしかにメイジーは島民の言葉を理解できない。
けれどガブリエーレはメイジーが理解できる言葉で話しても、島民たちは彼の言うことを聞いている。
「なら、どうしてあなたは彼らの言葉を理解できるのよ!」
『お前には関係ない』
一蹴されてしまい、メイジーが呆然としている間、ガブリエーレと島民の若い男は何かを話し始めた。
一人だけ頭に羽飾りがついて特別感があるといるということは彼らのリーダーなのだろうか。
明らかにメイジーを指差しながら何かを話しているではないか。
『違う。そうじゃない……そういうのは必要ないと言っているだろう?』
「ポップ! ベララベラー、ドゥルドゥル」
『はぁ…………もういい、好きにしろ』
「ポップ!」
若い男性はそう言った後に頭を下げた。
ガブリエーレはそう言うと、背を向けて去って行ってしまった。
「え……?」
葉っぱの上で取り残されたメイジーはガブリエーレに向かって腕を伸ばしていた。
島のリーダーであろう若い男性が女性の島民たちを集めて何かを話している。
その間もメイジーは何度も同じことを繰り返し言われていた。
「ベララベラー、ドゥルドゥル」
「ドゥルドゥル」
「ごめんなさい、何を言っているかさっぱりで……」
一応、ガブリエーレと話していた時と同じように話しかけてみるものの、意思疎通が取れる様子はない。




