第5話 曲芸団 『茶釜』2
「久しぶりだね大和」
舞台袖から現れたのは2年前と少し雰囲気の変わった影山だった。
「こんな所になんでお前がいるんだよ」
「実は僕も『茶釜』のファンなんだよね!大和も好きだったんだ」
「そんな冗談面白くも何ともねぇーよ」
桃井は珍しく声を荒らげた。
「落ち着いてよ大和。僕と黒竹さんは二年前のあの日から、異能庫から持ち出した七冊の原本を使いこなせる、才能のある人達を探しだして『黑童』って言う組織を作ったんだ」
「黑童!?」
嶽本は黑童と言う組織に聞き覚えのある様子だった。
「幻想栞には黑童と言う組織が絡んでるって聞いたことあるぞ」
「お久しぶりです嶽本さん、僕の抜けた第七席には貴方が就いたんですね」
「君のせいで桃井から逆恨みされてるんだよね」
「あはははは、それは災難ですね。でもまさか貴方が僕の代わりに席に就任するとは思いませんでしたよ。元特定異能指名手配者の嶽本邁さん」
嶽本の表情が一瞬で冷酷な表情へと変貌した。
「何故それをお前が知ってる」
「黒竹さんが仰ってたので」
顔馴染みのある三人の会話に入って行けない柿原は痺れを切らした。
「同窓会ならまた今度やってくれよ」
「ごめんなさい柿原さん、じゃあ二人とも先に地獄で待ってて下さい」
一方、茶介はこのタイミングを見計らって天幕の外へと逃げ出していた。
「なんでこんな事に巻き込まれなくちゃ行けないっちゃ」
天幕を出ると1人の男が立っていた。
「名前が確か茶介さんだっけ?」
「今急いでるっちゃ!ファン対応は出来ないっちゃ!」
「色鬼 (いろおに)色彩制限 茶 『停』」
※色鬼 色彩制限の能力は指定した色に一つだけ制限をかける事が出来る。今回は茶色は動けないと言う制限を掛けた。
茶介は茶色の衣装を着ていた、男を無視して走り去ろうとしたが色鬼の能力で身動きが取れない。
「まだ俺が質問してる最中だよ?どこに行くき?」
「お、お前も中に居る奴らの仲間っちゃ!?」
「俺をあんな連中と一緒にしないでほしいなぁ」
「じゃあ何者だっちゃ!?」
「俺は原本 蒐集家の鬼丸乱太郎、茶介さんの持ってる原本を貰いに来たんだ」
「原本蒐集家??」
「あれ?俺達の事知らない?あー『蒐鬼一家』って言えば分かるかな?」
茶介は『蒐鬼一家』と聞くと激しく動揺した。
「蒐鬼一家!?あの原本を集める為なら一切の手加減も慈悲もない極悪非道な集団の...」
「ちょっと語弊があるな、原本には凄まじい異能力が込められてるんだから、俺たち伝承者(非原本所有者でありながら潜在的に異能力を使える者たち)が原本所有者に手加減なんてする訳ないよね」
茶介は慌てて、その場で原本を取り出した。
『福を分かち、釜の底より、湯けむり立ち昇れ!』
『茶』と書かれた原本が凄まじい輝きを放っている。
『序章 茶釜乱舞』
茶介が詠唱すると辺り一帯を覆い尽くすほどの無数の茶釜が現れた。茶介はこの無数の茶釜の中を瞬時に移動することが出来る。また茶介が入っていない茶釜からは高熱のお湯が溢れ出てきて容易に近づく事が出来ない。
「今のうちに早くここから離れるっちゃ」
茶介は茶釜と茶釜を瞬時に移動しながら逃走を測ろうとしていた。鬼丸はその様子を眺めていた。
「へぇ〜、『分福茶釜』の能力は面白いなぁ〜」
熱湯を避けるために鬼丸は近くの木に飛び移った。
「何をボケっと眺めてんだよ、鬼丸」
隣の木の上には蒐鬼一家の一人、蹴場 凛の姿があった。
「帰りが遅いから来てみたら、さてはしっかり芸楽しんでただろ?」
「バレた?」
茶介は近くに流れる大きな川を目指していた。
「あいつ川の流れに乗って逃げようとしてるぞ」
「大丈夫、大丈夫。ちょうどいい鬼が来たから」
鬼丸は木から飛び降り、茶釜を足場代わりにした。
「氷鬼 氷結の掌」
※氷鬼の能力の1部の氷結の掌は触れた液体を凍結させる能力。
鬼丸が足元の熱湯に手を付けると、その場所を中心に一瞬で辺りの熱湯が凍結された。茶介の背後からは凄まじいスピードで熱湯が凍結されていく。
「こんなのずるいっちゃ!!」
茶介は川を目の前に氷鬼の能力によって無数の茶釜と一緒に冷凍保存されてしまった。
「いつ見ても俺たちの大将の能力は反則だよな」
木の上から眺めていた凛が呟いた。
鬼丸乱太郎の能力は鬼ごっこ。鬼ごっこには沢山の種類の遊び方がある。一定時間経つとランダムに鬼ごっこの種類が代わりその種類の鬼ごっこに応じた能力が使える。鬼丸が使える能力の鬼ごっこの種類は全部で五つある。
「なぁ凛、そろそろ俺たち蒐鬼一家も本気で原本集め始めようか」
「やっとか、何処までお供するぜ鬼丸」
その頃、両部隊の特異隊員達は苦戦を強いられていた。




