第1話 童話の原本
深夜の東京童話図書機関、地下一階 原本を保管している『異能庫』。
この日は御伽守護隊第五席の桃井大和と第七席の影山創が警備任務を勤めていた。
御伽守護隊には原本の所有者となり、異能力を使う事が御伽守護隊内の実力者上位七人に許可される。上位七人には特別に席の位が与えられている。そして原本や異能器を保管する異能庫は、基本的に席二名で警備にあたる。
「創、第七席就任初の警備だな!どんな気分だ」
桃井は影山と同期で影山が席になって一緒に働く事が楽しみだった。
「僕は黒竹さんに憧れて御伽守護隊に入ったじゃん。やっと同じ席まで上がってこれたんだ、嬉しいに決まってるよ!」
桃井は喜ぶ創の顔を見て嬉しそうにしている。この異能庫が出来てから今まで警備任務で何かトラブルが起きた事は一度もなかった。そんな事もあり、二人は昔の思い出話などをして過ごしていた。
「お疲れ!なーにサボってんだ」
二人が守護隊員時代の話で盛り上がっていると第六席、黒竹宗一が異能庫にやって来た。
「黒竹さん!?お疲れ様です」
二人は飛び跳ねるように立ち上がった。
「そんなびっくりしないでよ、今日は影山の第七席就任祝いに来ただけだよ」
「影山の席就任式に俺出られなかっただろ?だから今日盛大に祝ってやろうと思ってな」
創は歓喜余った表情をしていた。
「良かったな創!尊敬してる黒竹さんがわざわざ祝いに...」
その時黒竹は桃井に近ずいて強烈な一撃を腹に喰らわせた。
「ぐはぁぁぁ!!」
「桃井くん、君はちょっと寝ててくれ」
その場に倒れ込む桃井。
「大和!?」
創が桃井に駆け寄る。
「何するんですか!?」
「今日は君のお祝いに来たんだから桃井くんは必要ないだろ?」
創と大和は状況が理解できなかった。
「俺はこの日をずっと待ってたんだ、君が所有している『ねずみの婿入り』の原本を持った席がこの異能庫の警備にあたる時を」
先程までの雰囲気とは一変、不穏な空気が流れ始めた。
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数年前影山創がまだ幼い頃、両親と買い物に出かけていた帰り道、原本の能力を使って強盗を繰り返し童話守護隊から逃げていた犯罪者と遭遇し人質にされてしまう。その時に第六席に就任したばかりの黒竹に助けて貰った過去がある。
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「その原本には『壁穴』の能力があるだろ?俺はその能力でこの異能庫の中に入りたいんだ」
本来は異能庫を開けることが出来るのは童話守護隊零席のみだ。
「異能庫は零席の許可なく立ち入ることは禁止されてるじゃないですか」
「許可を取って入るなら君の原本を頼る事なんてしてないだろ」
原本を所有できるのは一人一冊までと決まりがあり、複数の原本を所持していても一番最初に所有権を得た原本の能力しか使う事はできない。
「だから影山くん、君に力を貸してほしいんだ」
桃井は意識が朦朧としない中、最後の力を振り絞った。
「創、早く上に上がって他の席を呼んでこい...ここは俺が何とかする」
「『桃』の原本の特性か、流石に頑丈だな」
桃井に影山が近づくと耳元で「ごめんね大和」と囁いた。そのまま影山は異能庫の扉の前に立った。
「序章 壁穴」
※壁穴は如何なる物体にも穴を開ける事が出来る能力。
原本を開き扉に手を当てて詠唱する。
異能庫の扉には人が通れる程の穴が空いた。
「なんでだよ...創」
影山は黒竹の「竹取物語」の原本の特性『魅了」によって影山の中にある黒竹への憧れ・尊敬の気持ちを著しく増幅された状態にあった。
「俺は黒竹さんと行くよ」
その言葉を聞くと桃井はそのまま意識を失った。
異能庫の中に侵入した時点で館内全域に警報がなり、すぐさま他の席が異能庫に向かったがそこに黒竹と影山の姿は無かった。
その夜、異能庫の中に保管されていた原本七冊と漆黒の筆一本が盗まれた。




