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ロッテ 1

前回から長くお時間いただきましたが、やっと投稿できました。


今回のお話は使用人のロッテの視点になります。

ウェインは、ロッテの旦那さんです。

2回に分けて投稿していて、前編です。


「ロッテ、来月リヒトの誕生日があるんだけど、毎年何かやっていたのかしら?」



洗濯物を干すにもそろそろ帽子が必要かねぇ、と強くなってきた日差しを見ていた私に、隣でシーツを干していたリルマーヤ様に話しかけられた。


「あらまあ、そう言えば! 早いものだね~、一年なんて。

コーリヒト様は、毎年、お誕生日にはご友人方と飲みに行ってしまいましたからね、その前に、フェルナンディアス様も呼んで四人で夕ご飯を一緒に食べてお祝いするってぐらいでしたね。」

「そうなのね。 今年も飲みに行っちゃうのかしら?」

「それはないでしょう! 今年は絶対家にいると思いますよ。」

「まあ、そのあたりはリヒトに頼んでみようかな。

ロッテ達も、その日は空けておいてね。」


夫の誕生日に何かしようと考えているなんて、このお嬢様もかわいいじゃあないの!

リルマーヤ様が頼めば、コーリヒト様の答えなんてわかっているから、今年のコーリヒト様の誕生日はウェインと私も空けておかないとね。



今でもよーく覚えているよ。 コーリヒト様の結婚の話がヴォルグ様からあったと言われた時のことは!

ついにこの時がきた!と嬉しく思ったのもつかの間、領主様のお嬢様を嫁に迎えると聞いて、あー終わったな、と一気にどん底に突き落とされた気分だったね。

そんな話があるものかと、領主様に騙されているんじゃあないかと思ったほどだよ。


そして、お嬢様に会ってきたというコーリヒト様に話を聞けば『きれいだった』としか言わなくて、全然様子がわからないし・・・。

年が明けて、ヴォルグ様の奥様が来て家の中の改修をし始めて、ああ、やっぱりその話は本当だったんだ、と少し気持ちが沈んでウェインに当たったりしたこともあったね。

私のことをよくわかっているウェインは、何も言わずに受け止めてくれたけど、返って余計に疎ましく思ったり。

あの頃は、ウェインに悪いことをしたと思っているよ。


忙しい日々なんてすぐに過ぎちゃう。

ついにコーリヒト様がお嬢様を連れてくる日がやってきた。

お嬢様っていうのは平民に対して威張っているというイメージしかないからね、お嬢様が先に歩いてきて、コーリヒト様が荷物を持ってあとから追いかけてくる、なんてことにならなきゃいいけど・・・と思っていたら、実際は二人仲良く手なんか繋いじゃって家に入ってきたから、私は開いた口がふさがらなかったね。


いや~、人生何が起こるかわからないよ。

女性と手をつないでいるコーリヒト様を見れるとは思わなかったし。

お嬢様も、私たち夫婦に挨拶してくれたし。


真っ白な、肩までしかない髪も、なんだかとっても似合っていて、こんなきれいな人がいるのかと思ったのが第一印象だった。


その日の初めての夕ご飯は四人で一緒に食べるから、コーリヒト様に頼んで呼びに行ってもらえばいいと思っていたら、お嬢様の方から『お皿を運ぶのを手伝うわ』と言ってくれて、その時からリルマーヤ様に対する考えが変わったね。

自分でも驚くぐらいに、調子がいいなぁと笑っちまったよ。


それからの、いろいろ教えている時間は楽しかったね。

私の言うことをちゃんと聞いてくれるし、わからないことがあれば質問してくれて。

貴族だったのに、この市井でやっていこうという姿は、見ていて気持ちの良いものだった。


そんなリルマーヤ様を見ていたら、きっと領主様もいい人なんだろうな、と思い、そんな領主様にお仕えしているヴォルグ様も見る目がある人なんだろうと思い、そしてそんな親を持つコーリヒト様もやっぱりいい人なんだろうと思っちゃって。

良い人たちに囲まれている私たち夫婦は幸せ者だな、なんて思っちゃったりして。

コーリヒト様とリルマーヤ様は日増しに仲良くなっていくのが傍から見てもわかるし、それを見ているのは楽しかったね。




◇◆◇




「リルマーヤ様、キッシュを持ってきましたよ。」

「うわ~、めっちゃおいしそう! リヒトも絶対喜ぶよ!

ありがとう、ロッテ、さすがだね!」

「おいしそうと言えば、この家も美味しい匂いだよ。 またたくさん料理を作ったんですね。」

「考えていたら、いろいろ食べたくなっちゃって。

リヒトの大好きなポテトサラダは外せないし、サッパリ系のサラダはミモザサラダにしたよ。 見た目もきれいだから。

あとは、みんな飲むからブルスケッタを作って、それからピザを焼くでしょ。

メインはミートボールのトマト煮にしようかと思って。

これから作るから、ロッテも手伝ってくれるかな。」

「わかりましたよ。 いいですよ。

そう言えば、チーズケーキはうまくできたんですか?」


リルマーヤ様は、誕生日にはケーキが必要だと言って悩んでいた。

甘いものが食べたいなら何でもあるでしょうと言ったら、そうではなくてロウソクを立てるから大きいケーキが欲しいと・・・。

かなりこだわりがあるみたいだったけど、結局チーズケーキにしたようで、ここひと月ぐらいチーズケーキの試作品に付き合わされていた。

まぁ、だんだん味も見た目も良くなっていくのを見るのは楽しかったけど、毎週チーズケーキっていうのもねぇ・・・リルマーヤ様には言えなかったけど。


「昨日作ったわ。 なかなかの自信作になったよ。

付き合ってくれてありがとうね、ロッテ。

そのチーズケーキも今日で終わりだから!

当分、チーズケーキはもういいかな。ふふふ。」


おやおや、本人もわかっているみたいだね。




読んでくださり、ありがとうございます。


番外編は不定期投稿です。

考えがまとまったら投稿していますので、少し時間を頂いています。

お付き合いくださり、本当に感謝です。


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