帰省 2
積もる話はマーヤに任せて俺はうなづいていよう・・・と思っていたのだが、話題が降りかかってきた。
「お義姉様とリヒトは初対面でしたわね。
紹介するわ、お兄様の奥様のクリスティネお義姉様よ。
そしてこちらが、私の夫のコーリヒト・ヴォルグです。」
「初めまして、コーリヒトです。 キースライノ様にも良くして頂いています。
どうぞよろしくお願いいたします。」
「まぁ、ご丁寧なあいさつをありがとうございます。
クリスティネです。 こちらこそよろしくお願いしますね。
お二人の婚姻の儀の時は、ちょうど私のお産の時期と重なってしまって、私は実家へ戻っていたので、お二人には会えませんでしたね。」
「そうそう! だから紹介が遅れてしまったの。
それで、私の可愛い甥っ子に会いたいのだけれど、どこにいるのかしら。」
マーヤがそう言うと、以前マーヤの侍女だったジゼルが小さな男の子を抱いてきて、クリスティネ様に渡した。
昼寝でもしていたのだろうか、まだ目がしょぼしょぼして欠伸をしている。
小さな男の子は、そんな仕草もまたかわいらしい。
「連れてきてくれてありがとう、ジゼル。
さあ、皆様に挨拶ですよ、初めまして、ルースティーノと言います。 一歳です。
よろしくお願いします。」
男の子に代わって、母親のクリスティネ様が挨拶をした。
ちょこんとお辞儀をしたが、それもクリスティネ様に後ろから頭を押されて、されるがままになっている。
そんな様子も微笑ましい。
「おぉ、上手に挨拶ができたな。 ほら、おじいちゃまのところに来なさい。」
「いえいえ、ルース、おばあちゃまのところですよ。」
子爵様夫妻がルースティーノ様に声をかけている。
いやいや、挨拶はクリスティネ様がして、本人は何もしていないから!
子爵様たちも、孫は目に入れても痛くないぐらい可愛いらしく、顔が緩みっぱなしだ。
そんなルースティーノ様は二人の言葉は耳に入っていない様で、マーヤの顔をじっと見てから手を差し出した。
「たー、たー!」
「え、違いますよ、あれはリルマーヤさんですよ。
初めて会うでしょう? お父様ではないのですよ。」
「? “たー”ってお父様、つまりお兄様のキースライノのことですか?」
マーヤが、話が分からずクリスティネ様に聞いた。
「はい、私が彼のことを “ライノ” と呼ぶのを聞いて、多分ルースも “らー” と言いたいようなんですが言えないので “たー” になってしまうようです。
確かにライノを呼ぶときには “たー” というので、ライノのことを言っているのだと思うのですが、なぜリルマーヤさんにも “たー” と呼ぶのでしょう?」
話をしている間にルースティーノ様がもぞもぞし始めたので、クリスティネ様が床に下ろしてあげると、テーブルに手をつきながらマーヤの方に歩いてきた。
「たー、たー」
「私はリルマーヤよ、初めまして、ルースティーノ。
あなたの叔母になるけれど、おばさんとは呼ばないでね。
可愛い! けれど、なんというか・・・お兄様そっくりね!」
「ははは、やっぱりリルもそう思うか。
髪の毛がそろってきて、赤ちゃんぽさが薄れて幼児の顔つきになってきたら、何だか俺に似てきてなぁ。
会わせる人、みんなに俺にそっくりだと言われるんだ。」
「そうなのよ、ルースの相手をしていると、あら、キースだったかしら? とちょっと錯覚しちゃうのよね。」
「そうだな、思わず “キース” と声をかけてしまうことがあるなぁ。」
同じ家に住んでいる子爵様夫妻も間違えてしまうほど、確かにキースライノ様にそっくりだ。
誰が父親か、見間違えようがないな。
「ルース、ほらおいで。 抱っこしてあげましょう。」
マーヤが手を出すとルースティーノ様も手を差し出したので、マーヤが抱き上げて膝にのせてあげた。
嬉しそうに笑うルースティーノ様だったが、マーヤの胸に手を当てた時、不思議そうにマーヤの顔を見上げた。
ルースティーノ様とはいえ、その手はどかして欲しいな。 俺としては!
そこへキースライノ様が声をかけた。
「ルース、お父様はこっちだぞ、こちらにおいで!」
「たー?」
声をかけられたルースティーノ様はキース様を見て、そのあとマーヤの顔を見て、もう一度キース様を見た。
と、いきなり顔がゆがんでわーんと泣き出してしまった。
「あらあら、泣き始めちゃったわ。 お兄様、意地悪しないでください。」
「おいおい、俺は声をかけただけだろう。」
泣き始めたルースティーノ様を、マーヤはクリスティネ様に渡すと、ルースティーノ様は顔をうずめてヒックヒックと泣いた。
「様子を見ていますと、どうやらルースはリルマーヤさんのことをやっぱりライノだと思っているようですわ。
私たちから見てお二人はそれほど似ているとは思わないけれど、この子から見たらやはり兄と妹で、とても似ていらっしゃると思ったのかもしれません。
お父様に抱っこされていたと思ったら、前からまた別のお父様が声をかけてきたので、混乱してしまって泣いてしまったのではないでしょうか。」
「小さな頃はお兄様とよく似ていると言われましたが、大人になった今では似ているなんてほとんど言われません。
でも、ルースティーノの目から見るとやはり私とお兄様は似ているんでしょうね。
ふふふ、子供って面白いわ。」
キースライノ様とマーヤは、言われれば『あー、兄妹で少し似ているかも』と思うけど、気にしなければあまり気が付かない。
それなのにルースティーノ様はマーヤたちが兄妹だとわかったということか。
ほんと、子供って不思議だ!
帰省編は7回に分けて投稿いたします。
次回は、明日15時にアップします。
楽しんでお読みくださるとうれしいです。
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