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二人の記念日 5


エヴァンの店で美味しい料理を堪能して、そのあとは通り沿いにある店の様子をいろいろ見ながらのんびりと帰ってきた。



家に着いて服を普段着に着替えてリビングのソファーでくつろいでいると、マーヤが赤いリボンで結んである袋を持って俺の横に座った。

おぉ、これはきっと贈り物だな。 


「リヒト、これ、どうぞ!」

「え、これは何? 開けてもいいのか?」

「うん、開けてみて!」


俺の言い方はちょっとわざとらしかったかな。

でもそんなことは気にしないような、嬉しそうなマーヤの顔があった。

マーヤの贈り物か、何だろう!

贈り物があるだろうとは思っていたけど、何にしたのかはわからないから、ドキドキしながらリボンをほどいて袋の中を見た。


「あー、財布だ! これマーヤが選んでくれたの? というか二つあるけど。」

「ふふふ、今日は二人の記念日だからね。

何かリヒトと同じものを、と思ったんだけど、ペアルックをするほどの勇気はないから、同じ物を持ちたいな、と思って。

それで、いつも持てるものがいいと考えてお財布を選んだの。 どうかしら?」

「いい! すごくいいよ。 財布、欲しかったんだ。

マーヤと同じものなのか。 すごく嬉しいよ!」


袋の中には色違いの財布が二つ入っていた。

素材は革、牛の革かな、でも触り心地がいいし、少し柔らかい。

表側に、木の葉の型押しの模様が入っているところが、シンプルだけど一味違うという感じがある。


今使っている財布は、騎士学校へ入学する時に母上が買ってくれたものだ。

結構くたびれてきてしまっているし、もう少しで穴も開きそうなので、そろそろ買い替えようかと思っていたところだった。

もしかしたら、そんなところもマーヤは見てくれていたのかもしれない。


今の財布は、紐で括って中身が出ないようにするタイプだが、マーヤが選んでくれたものはループが付いていて、ボタンにひっかけるタイプ。

紐はぐるぐる巻きにするので取り出しがちょっと面倒だったけど、このひっかけるタイプなら簡単に開け閉めができそう。


「こっちの少し濃い茶色はリヒト、この薄い茶色は私のね。

若い牛の革を使ってあるから、普通の革より少し柔らかいみたい。 お店の人に教えてもらったの。

触り心地が良くて、これだ!って思ったんだけど、リヒトはどう思う?」

「うん、確かにちょっと柔らかくて、使い心地がよさそうだ。 ありがとう。

一緒の物を持ってると思うと、リングと同じようにつながってる感じがするな。

大切に使うよ!」

「喜んでくれて私も嬉しい!」


「この革の財布ってもしかして、マーヤがこの前行ったお店で選んだのか?」

「よくわかったわね、そう、リヒトがこっそり私たちの後をつけてきたときに入った革のお店で買ったの。

カミーリアに良い革製品を扱うお店を知らないかと聞いたらあのお店を教えてくれて、あの時にこのお財布を選んだの。」

「俺もあの店に入ってみたかったけど、ちょっと狭そうな店だったから俺も入るとマーヤたちにバレちゃうな、と思って入るのを止めたんだ。」

「ふふふ、リヒトがお店に入るのをあきらめてくれたおかげで、お財布を選んでいるところを見られなくてよかったわ。

他にも、ベルトとか、馬具の小物とか、いろいろ面白そうなものがあったから、今度一緒に行ってみましょう。」

「おお、馬具の小物か~、それは物欲をそそられるな。」


マーヤは、そんなに前から贈り物を考えていてくれていたんだな。

お財布を開けたり閉めたり、触り心地を楽しんでいると、俺をじっと見る視線が・・・。

マーヤが何かを期待しているような目でこっちを見ていた。



うー、フェルナン、ありがとう!

ここで俺が『あ、ごめん、俺は何も用意していないんだ』とでも言おうものなら、一週間ほどは口をきいてくれなかったかもしれないほどの圧力だ。

良かったぜ、ちゃんと準備をしておいて!



「俺からも贈り物があるんだけど・・・」

「えー、ホント? 何かな!」

「ちょっと待ってて、持ってくるよ。」


マーヤ、よく言うぜ! そんな熱い視線を送っておいて!


俺はリビングを出て、納戸へ行った。

おぉ、ちゃんと運んでおいてくれてある!

シアーズ商会の店で見たときは、店舗の広さもあってそれほど大きさを感じなかったけど、家で見るとなかなかでかいな。

床が傷ついてしまうからこれも必要でしょう、とそれを乗せる敷物も勧められた。

レイナの親父さん、さすが商売人だよ。

でも重たそうだから、この敷物ごと引っ張っていく方がいいな。

俺はずるずるとリビングまで贈り物が乗った敷物を引っ張った。


「マーヤ、お待たせ。 俺からの贈り物はこれだ!」

「うわーーー! ロッキングチェアだ! 素敵素敵!!」


おっしゃー! すごく喜んでくれている。 俺も嬉しいな。


「あら? でも納戸には昨日入ったけど、こんな大きな家具はなかったわ。」

「さっき、俺たちがエヴァンの店に行っている間に持ってきてもらったんだ。

レイナの実家のシアーズ商会に頼んだけど、いろいろとこっちの希望を聞いてくれて助かった。」

「スゴイ! リヒトもなかなかまめだわ。 そこまでしてくれるなんて、ありがとう。」

「気に入ってくれたか?」

「もちろんよ! でも、どうしてロッキングチェアを選んだの?」

「俺が小さい頃、祖父母の家にこんな椅子があったんだ。

兄弟三人でそのロッキングチェア?っていうので遊んだり、祖母が座っているときに俺はその膝に座るのが好きで、よく祖母と一緒に揺られていた。

祖父母が亡くなり、そのロッキングチェアもどうなったかわからないけど、また座ってみたいっていう気持ちがあって、今回思い出したから奮発した。」

「まぁ、リヒトの思い出の椅子なのね。

ふふふ、その椅子で遊んでいるリヒトが目に浮かぶわ!」


「マーヤはこの椅子の名前を知っていたんだな。

俺は知らなくって、子供のころは “ゆりかごの椅子” って言ってたから、店で説明するときに大変だったよ。」

「ロッキングチェアのこと? 実際には私も初めて見るけど、外国の映画とかで見たことはあったから名前は知っているわ。

でも、ゆりかごって・・・言いたい気持ちはわかるけど “かご” はついていないわねぇ。」



そうなのだ! シアーズ商会に行ったはいいけど、この椅子にたどり着くまでにかなり苦労したのだ。



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