二人の記念日 2
前回の続きです。
仕事が終わってから俺は、ネイトと待ち合わせの飲み屋に行った。
店内に入ってぐるりと見渡したが、ネイトはまだ来ていないようだ。
お願いした方が後に来るのでは悪いからな、ちょっと早めに来てよかったぜ。
店の親父に、連れが来るまで待たせてもらうことを伝え、先に料理を頼んでおく。
ネイトも俺と同じような好みだから、俺が好きなものを頼んでおけば間違いない。
と、そこへ仕事帰りのネイトがやってきた。
「コーリ、お誘いありがと。 待たせてわりぃ。」
「ネイト、こっちこそお疲れのところありがとな。」
「いや、俺もそろそろ飲みたいと思っていたところだったからよぉ。」
「料理は適当に頼んだ。 飲み物はワインでいいか?」
店員に頼んでワインを持ってきてもらい、俺たちは乾杯をした。
「「おつかれ~」」
俺はいつもの調子でグラスをカチンと当てた。
「あ~、お前の乾杯はグラスを当てるんだったな。 なんか面白いな。」
ネイトに言われて気が付く。
今では、家でも乾杯はグラス同士を当てるようになり、不思議だと思わなくなっていた。
だいぶマーヤに感化されているな。
「ネイト、最近はどうだ? この町には慣れたか?」
「ああ、かなり慣れてきたよ。 どこそこに行けって言われたらすっ飛んで行けるぜ。」
「それは頼もしいな。」
「でもちょっと平和だな~。 おかげで筋肉がつき放題だよ。」
「どうして平和だと筋肉がつくんだ?」
「待機中は筋トレをするんだよ。 少しは事務仕事もあるけどな。
訓練と筋トレが多くて、休む間もなく合間に事務仕事で、違う意味で毎日へとへとだよ。」
「ははは、平和もなかなか大変だな。
で、話は変わるが、ルミナとはなかなかいい仲みたいだな。」
「ど、どこでそれを・・・あーレイナちゃんたちからだな。
まぁ、順調に少しずつ進展しているよ。 先日は一緒にご飯食べに行ったし。」
「おぉ、いいじゃん。 ルミナを泣かせるなよ~。」
「そんなことしないから安心してください、お父さん。」
「誰が父さんじゃ!」
「ははは、コーリがそんなこと言うからだよ。
ルミナってさ、顔を近づけて『いかがですか、お嬢様』って言うと、突然顔がぼんって真っ赤になるからかわいくてさ。」
なんだよ~、ネイト、楽しくやってるみたいじゃん。
俺もマーヤに言ってみようかな 『お嬢様、こちらへどうぞ』 とか!
・・・んん? いや、マーヤは本当のお嬢様だった。
そんな彼女に言っても全然動じない気がする。
『リヒト、何言ってるの?』 と、冷めた目で見られて終わりだな・・・。
「って、俺の話はいいんだよ! 今日はお前の相談事だろう?」
「そうだった。 ネイト~、どうしよう。 俺、全然わからなくってさ~。」
「何がだよ! 浮気の仕方か? 悪いがそれは俺も知らないな。」
「違うよ! 俺はそんなことはやらん! そうじゃなくって、贈り物だよ。」
俺は先日フェルナンと話したことをネイトに伝えた。
「おぉ、ついにコーリも女性に贈り物を考える年ごろになったのか~。
母は嬉しいわ!」
「誰が俺の母さんじゃ!」
「ははは、コーリ、いいノリだな。
って、贈り物かぁ・・・普通なら花とか、アクセサリーとかだけど・・・。」
「普通はそういうものを渡すのか。」
「でも、なーんか違うよな。」
「違うのか?」
「お前・・・本当に自分で考えられないのか? 考えるの、やめてるだけだろ!」
「いやいや、全く想像がつかないのだ。」
「そんな偉そうに言われてもな・・・フェルナンディアスさんが言うように嫁さんも贈り物を準備しているんだよな?」
「多分・・・絶対用意すると思う。 マーヤは人を驚かせてその嬉しい顔を見たいっていうところがあるから。」
「あー、わかる! あの飲み会は楽しかったもんな。
がー、余計に贈り物のハードルが上がったじゃないか!・・・なんで俺が考えるの?・・・俺も苦労するな。」
ネイトはブツブツ言いながらも一生懸命考えてくれた。
俺はいい友を持ったよ。 恥ずかしいから本人には真面目に言えないけど!
「そうだな、一緒に住んでいるんだから、お前も一緒に使えるものを贈ったらどうだ?
嫁さんに贈り物っていう意味とちょっと違ってきちゃうけど、でも初めて会った時の記念日ならコーリにも関係あることだし、おぉ、自分で言ってて、すごくいい案だと思えてきた!」
「なるほど~、マーヤへのというよりは、二人への贈り物ってことか~それ、いい案だ!」
「俺ってスゴクね?」
「うんうん、ネイト、最高だよ! お前に相談してよかったよ。」
「だろ~、ささ、飲みなおそうぜ。」
「よっしゃ、では、良き友に乾杯!」
「手のかかる友に乾杯!」
「なんだよ~ネイト、そこはお前も『良き友に』だろ!」
「えー、世話のかかる友ほどかわいいって言うじゃん?」
全く想像がつかなかった贈り物だったけど、ネイトの言葉から、頭の中で霞がかっていたものがその形を現していった。
俺が欲しい物で、二人で使えて、多分マーヤも喜んでくれると思う物が一つ思い浮かび上がる。
俺は肩の荷が下りた感じがして、その後はネイトとの会話を楽しんだ。
次の日から、俺は贈り物の手配に動いた。
マーヤが誘ってくれた日は、来月といってもあと半月ぐらいしかない。
まず、レイナにお願いして、彼女の実家のシアーズ商会に連絡を取ってもらった。
二回ほどシアーズ商会に足を運んで、希望通りの品物が見つかったので、それを当日、家に持ってきてもらうようお願いした。
マーヤは喜んでくれるかな。
うん、きっと喜んでくれるだろう。
俺も欲しいと思っていたものだし。
二人の記念日がとても楽しい日になるだろうと思うと、とても待ち遠しい。
お話の続きは、次の日曜日に投稿します。
のんびり投稿ですみません。
番外編は不定期投稿です。
お話がまとまったら投稿しています。
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