聖剣から始まる異世界転生(1)
僕の名前は朝ドラ。もちろん本名ではない。いつもゲームで使っているハンドル名だ。根っからの聖剣好きなので、有名なあの勇者の名前をもじったわけだ。
僕のキャラクターメイキングは攻撃力偏重だ。強くてニューゲームで雑魚相手に最強装備を無双するのが大好きだ。
今日もゲームの新しい隠し武器を回収したので、表ボス(雑魚)を相手に試し斬りだ。
「たったらーらー♪、たったらー♪」
テレビの眩しい光の中から軽やかな歌声が響いてきた。
いつものBGMではなく、女の子の声だと!?
これはひょっとしてレアな隠しエンディングでも発見したのだろうか?
「隠しエンディングではありませんよ。」
光の中から誰かがしゃべった。
『貴方を異世界に転生します。』
「よっしゃ、キター!」
『貴方には異世界転生特典を与えます。特別に好きなチートを選んでも良いですよ?』
「聖剣が欲しいです!聖剣にして下さい。」
僕は食いぎみに訴えた。
選べる聖剣には種類が沢山あった。思わず本能に従いかっこよい名前から選ぼうとしていたら、光の中の人が色々と親切にアドバイスをしてくれた。
種類は片手剣を強く薦められたのだが、やはりここは両手剣の一択だ。今度はデザイン重視で悩んだ末に150cmで2㎏ほどの1本を選んだ。両手剣の中では小ぶりの筈なのだが想像よりもかなり重い。
ただし攻撃力は文句無しで、ドラゴンの鱗も魔王の結界も紙のように切ることが出来るそうだ。
それではさっそく冒険へと出発だ!
「駄目ですよ?」
冒険者ギルドに登録して直ぐにゴブリン退治に出かけようとしたら、受付のかわいいお姉さんに止められた。
「初心者独りでは無理ですよ?」
僕が熱心に実力を説明したのだが納得をして貰えない。
「ゴブリンデストロイヤーさんとご一緒でなら・・・」
まあ、一度実力を見せておくのも悪くはないか。ゴブリンデストロイヤーさんの見た目は怪しい鎧姿なのだが、ギルドの紹介なら身元は確かだろう。時間が惜しいので了承して直ぐに二人で出発した。
その洞窟の入り口迄は街から二時間ほどの距離だった。歩いただけでもう疲れているのはもちろん秘密だ。
早速中へと入ってみると・・・真っ暗で何も見えない・・・。どうしよう?
すぐにゴブリンデストロイヤーさんが松明を用意してくれた。冒険を舐めていてごめんなさい。
松明の灯りは暗くて見通しも悪いけれど、奥にゴブリン達がぼんやりと見えていた。わらわらと次々に向かって来るのを全て一刀で切りすてていく。かなりの血糊が飛び散っているが剣の切れ味が落ちる気配がない。それ所か、狭い洞窟の壁にぶつけたのに、洞窟ごと切り裂いていく。流石のチート聖剣だ。
「きゃああっー!」
奥から甲高い悲鳴が聞こえてくるので先を急ぐ。
「グサッ!」
振り向くとすぐ後ろでゴブリンデストロイヤーさんがゴブリンを串刺しにしていた。洞窟の外にいたのが戻って来たのかな?僕の背中は任せるよ?
奥には白い神官服の女の子がへたりこんでいた。失禁をしているようで金髪の美少女なのに服が大変な事になっている。
さらにその先には黒でまとめた魔女っ子がゴブリン達に押し倒されていた。いまだに乱暴されているということは、まだ息があるのだろう。
取り敢えず助けてはみたのだが・・・
はだけた白い身体は眼福だったのだがどす黒い穴が空いていた。
ゴブリンデストロイヤーと神官が話している。
「毒消しの薬か呪文は持っていないのか?」
「はい、私が使えるのは回復魔法のみです。」
「かわいそうだが、これはすでに手遅れだな。」
「!!!!」
僕も回復の手段は持っていない。毒消しは買っておこうと心に誓った。
長い階段の先には広間があった。思っていたよりゴブリンの数が多い。素振りのように手応えも無く切り捨ててはいるが、そろそろ腕を上げるのがキツくなってきた。竹刀ならともかく鉄の塊だと素振りでも50回が限界だ。
ヤバい。いくら一撃必殺ができても飽和攻撃をされたらおしまいだ。これはゴブリンデストロイヤーさんが手伝ってくれなかったら不味かったかもしれない。
やっとのこと広間の敵を全て倒して一息をつく。
ゴブリンデストロイヤーさんはというと、隠し部屋から子供ゴブリンを見つけて処分をしている。
・・・・あれはプロだ。
広間には武道服の切れ端を身に着けた少女やすっ裸の少女が無気力に転がっている。
これどうすんだ、と思っていたら荷馬車の手配はゴブリンデストロイヤーさんがやってくれた。
疲れたので、僕も乗せてもらって良いですか?