遊び人が貰う異世界転生特典
僕の名前はノビえもん。
短パンとランドセルが似合う小学5年生だ。
日本でしかも都内の庭付き一戸建に在住しているなんてのは、勝ち組まっしぐらの人生の筈なんだけど・・・・。勉強は苦手、スポーツは苦手、見た目も眼鏡で冴えない小市民をしている。
物心がついた頃には、未来から来たロボットがひみつ道具でなんとかしてくれる未来を夢見ては現実逃避をしていた。
よくある転生モノへの現実逃避と同じだということは、さすがに学年ビリの自分でも気がついている。
「ごめんなさい。お母さんがノビえもんとはお話をしちゃいけないって・・・」
教室でみんなに注目されている中で、クラスのマドンナのシスカちゃんから悲しい発表があった。さすがの僕でもあまりにも悲しすぎて思わず目の前が真っ白になっていく・・・。
夢だ!きっとこれは夢に違いない!
僕は前向きに考える事にした。
『夢ではありませんよ?』
すぐ側から声がかかる。
『因みに現実逃避は前向きとは言いませんよ?』
いつの間にか白い光の中に少女の姿が浮かんでいた。確かにさっきまでは何も無かった所にだ。
見た目は10歳を少し過ぎた位だろうか。
恐ろしく肌が白い。まるでアルビノだ。
目は蒼く、長い髪は銀の絹のようだ。
青いネコ耳に違和感があるが、きっと何かの意味があるのだろう。
白いワンピースと銀色の髪が、風もないのにふんわりと漂っている。
思わず無意識のうちに下から覗こうとしたら、何かで頭を叩かれてキツく怒られた。
そんなに怒らなくても良いじゃないか?
シスカちゃんのお風呂を覗いた時を思い出していると話が進んだ。
『貴方にはこの現世のままで一つだけ異世界転生用の特典を与えましょう。』
まだ死んでもいないのにこの厚待遇。やっぱり僕は特別だったのだろう。
『貴方があまりにも残念で見ていられませんでしたので。』
ある意味では僕は特別だったということで・・・。ほんとうに勘違い野郎でスミマセンでしたっ。
かなり恥ずかしかったけれども、それはそれ、これはこれだ。千載一遇のチャンスに気持ちを切り替える。
「悟りの書を下さい!」
今こそゲームで学んだ知識が役に立つ日が来たようだ。
「読んだだけで、遊び人を賢者へとかえてくれる悟りの書を僕に下さい!!」
僕は熱く思いを、真摯に願いを伝えた。
・・・
『承りました。その願い、叶えましょう。』
やった!ついにやったぞ!
これで小市民生活からは卒業だ!
明日からはみんなに尊敬される人生の始まりだ!きっとシスカちゃんも僕の事を見直してくれる。もしかするとひょっとしたら結婚だってしてくれるかもしれない!?
ドサドサドサ・・・・・・
目の前に沢山の本が現れた。
「ん? 悟りの書は一冊では無いのか?」
表紙を見ると日本語で書かれているようだ。気のせいか見覚えがあり、なんだか懐かしい。
・・・というか、これらは学校の教科書や参考書に問題集では???自慢ではないがあまり使ってひいないのでイマイチ確信が持てない。
『貴方が賢者となる為に必要な書物を集めました。既にお持ちのモノと、これから貰うモノですね。これらをキチンと修めれば、十分に貴方の望んだ姿になれますよ?』
・・・・
思考を停止した頭に、過去の思い出が浮かび上がってくる。お父さんのくれた誕生日プレゼントの思い出だ。
流行りの最新ゲームを期待しながら眠りにつき、珍しく早起きした枕元に置いてあったプレゼントの包み。
ドキドキしながら開けてみる。その包みの中から出てきたのは、なんと驚いたことに・・・・
「為になる本」
お父さんが女神様だったんだね。




