東大から始まる異世界転生(2)
体の小さいうちは家の仕事を手伝いながら、家にあった貴重な本で読み書きを覚える。
当たり前だが計算の出来た僕は、程なくして商人のところで働くようになり、そこでこの国の地理、歴史、法律、経済、有力者など出来る限りの情報を収集し、頭に叩き込んだ。
暗記は根気。やるかやらないかだ。
継続は力なり。この知識が役に立つ時がいつかきっと来る。
「王都で文官の試験を受けてみないかい?」
知り合いの商人経由で士官のお誘いがあった。
「平民が貴族になることは10年に一度も無いけれど、君なら一代限りの名誉男爵になれるかもしれないよ。」
資格は大事。誰かがそう言っていた気がする。
良い機会だし、取り敢えず受けてみるか。
地理、歴史、法律、経済、計算・・・、
答えの決まっている問題なんて間違えようがない。
次は、行政や経済の問題点?
論文形式もあるのか。これは面白そうだ。日本とは国の前提が違うから、いろいろ新しい思い付きが頭にひらめく。
人間は考える葦である。
フランスの有名な哲学者・パスカルの言葉だっけか。
そして、とても偉い人がわざわざ家にやって来た。
「素晴らしい!過去最高の得点だよ。論述での数々の改善案も革新的だが現実的で良くできている。」
「今すぐにでも王都に来て、私の右腕となって欲しい。」
調子にのったら駄目だ。
こんなの現代人なら誰にだって当たり前に出来る事だよね。
僕は目立たないように気を付けながら、今日も異世界で普通の生活を目指す。
真面目なところは日本人の美点だと思います。最近は努力や結果に見合わない対価を求める人が多くなってしまった気がします。