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有明海から始まる異世界転生
我輩はムツゴロウである。名前はまだ無い。
今日も干潟をピョンピョン跳び跳ねている。
「むつかけ」と呼ばれる伝統漁法が有名だが、効率重視のこの時代では、いつか廃れて行くのだろう。
有明海は美しい。夕日が水平線に沈む頃、茜色の空に、干潟の海苔ひびが逆光のシルエットとなって浮かび上がる。
嗚呼、今日も夕陽が綺麗だ。
『夕陽ではありません。』
光の中から誰かがしゃべった。
『貴方を異世界に転生します。』
「!?」
・・・
冒険者組合という所で我輩はスカウトされた。人間でさえなかった我輩が、いったい何の役に立つというのだろうか。
「竜騎士になってみないかい?」
「君には生まれもった才能がある。」
聞いたこともない職業なんだけど、僕はいったいどうしてスカウトされたんだろう?
竜騎士って、なぜジャンプして攻撃するの?
竜から飛び降りれば良いのでは?