初めまして
パパ活とは、金銭的に余裕のある男性とデートや食事などをして、金銭的授与を受けること。
※この物語は全てフィクションです。
「ねぇねぇ、サユリがオヤジと歩いてるとこ見たんだけど、あれ、父親じゃないよね?」
「ん?あぁ、あれパパだよ。」
「でも、腕組んでなかった?」
「うち、パパとめっちゃ仲良いから。」
牧田サユリ。高校2年生。
サユリはパパ活女子だった。
アプリで知り合った男とデートをして金を貰う。
サユリにとって、これは日常だった。
今日もまた、サユリは男から金を貰うために、自分を可愛く作る。
「初めましてぇ。私、ユウカって言いますぅ。」
声を高くして、偽名を使うい、上目遣いで挨拶をすると、男は大抵コロッと堕ちる。
今回の男は、いつものキモいオヤジのような人ではなく、スーツの似合う、背の高いお兄さんだった。
「初めまして、ユウカさん。アキトです。」
そう名乗った男はニコッとサユリに笑いかけた。
サユリは少しドキッとしてうつむき、制服の裾を握りしめた。
「あ、はい、3万円。終わった時に、足りない分渡すね。」
「ありがとうございます。」
サユリは目の前に差し出された3万円を受け取るとアキトの腕を取り自分の腕を絡ませた。
「どこに行きますか?」
ユウカは子供っぽく笑いそう訪ねると、アキトは少し悩んだあと、目の前の建物を指さした。
「ユウカさんの欲しいものを見に行きましょうか。」
アプリに登録してあるプロフィールの、好きな物の欄に書いたことを思い出したサユリは嬉しそうにピョンピョンと跳ねて喜んだ。
スカートがふわふわと揺れる。
「行きましょ!アキトさん!!」
アキトはサユリの頭を数回撫でると、サユリの腕を引いて歩き出した。
「アキトさんって、30代には見えないですよね。」
「そうかな?僕もう38なんだけどな。」
「え、ほんとですか!?20代に見えますよ!」
「それは言い過ぎ。」
「ほんとですって!絶対モテるでしょう?」
「モテないよ。」
「嘘ですね。こんなにかっこいいのにモテないはずないです!」
「若い子にかっこいいって言われると自信がつくね。ありがとう。ユウカさんも写真より全然可愛いです。」
「ありがとうございます。あ、あの、さん付け無しでいいですよ?ユウカって気軽に呼んでください。」
「そう?じゃあお言葉に甘えて、ユウカも敬語無しでもいいからね。」
「わかった!」
「うん。そういえば、その制服、〇〇高校だよね?」
「そうだよ。」
「僕も〇〇高校通ってたんだよね。まだハルコさんいるの?」
「食堂のおばちゃん!?いるよ!」
「そっか…もうおばちゃんか…」
アキトは少し悲しそうにそう言うと、今度は楽しそうに話し始めた。
「僕たちの時は、食堂のマドンナなんて言われてたんだよ。男女共に人気があって、生徒の中には告白する人もいたくらいだ。僕も当時はハルコさんに惚れてたんだけどね。さすがに告白する勇気はなかったけど。そんな人が、今ではもうおばちゃんかぁ。」
「ハルコさんにそんなに過去が…想像できないなぁ。」
「あと、体育館裏の梯子、まだあるの?」
「あの錆びてて使えないはしご?」
「錆びてる?」
「うん。」
「そっか。…あの梯子はね、体育館の屋根裏部屋に入る為の梯子なんだ。」
「屋根裏部屋?そんなのあるの?」
「生徒しか知らない秘密のサボり場所だよ。」
「へぇー。」
「機会があると行ってみるといい。」
「うん。明日見てみる。」
2人の会話はビルの入口で1度止まる。
中に入りエスカレーターに乗り少し登った所で、1段上にいたアキトは口を開いた。
「なんだか、すごく不思議な気分だ。」
「なにが?」
「僕たちの見てきたものが、君たちには違うように見えてるってことだろ?すごく不思議だ。」
「そうだね。」
「今日会ったのがユウカで良かったよ。」
アキトはそう言うとまた、サユリの頭をポンポンと撫でた。
読んでいただきありがとうございました。
いかがだったでしょうか。
今学生の人も、大人の人も、過去があり未来があります。
それは現在とはかなり違うものでしょう。
皆さんはそれをどう感じますか?