第3話「集まる戦士たち」
「それで? なぜお前の『採用面接』とやらに俺まで付き合わされるんだ?」
サラマンドラはキリエの活動拠点として、最低限機能するよう整えられた接待酒場の地下室でぼやいていた。
「そりゃあ私一人の判断より、第3者の意見も含めるに越したことは無いからね!」
「……余裕があればお前をサポートするようヘルタに言われてなければ、すぐに帰りたいところだけどな」
「まあそう言わずに! 一緒にウェンディゴをぶちのめした仲じゃない! スマリトを録音モードにして……さあ早速、採用面接始めましょ!」
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【面接記録その①】
ヴィッキー「名前はヴィッキー。見ての通りオーク族の女だよ。腕っぷしには自信がある」
キリエ「わーお。オーク族だって。初っ端からSSR引いちゃった」
サラマンドラ「スマリトのゲームじゃないんだぞ……」
キリエ「分かってるって。得物はそのでかいハンマーね! それとその岩でも噛み砕けそうな牙、めっちゃイカしてる! ハイ採用!」
サラマンドラ「判断が早いな!」
【面接記録その②】
ラファエル「ラファエル=ベルティリアですわ。正式な名前はラファエル=デジャースタ=プリミエル=ベルティリア4世ですが、ラファエルと呼んでくれて結構ですわ」
キリエ「……私、仕事の採用面接にクソでかいグラスでワイン飲みながら臨む人、初めて見た」
サラマンドラ「ベルティリア家といったらこの地方で最も有名な魔術師の名家の一つじゃないか」
キリエ「それマジ!? じゃあ採用! ほらやっぱり貴女を呼んで良かったじゃん」
サラマンドラ「何か裏があるんじゃないかって言う意味で言ったんだがな」
キリエ「でも私よりおっぱいでかいし」
サラマンドラ「……好きにしろ」
【面接記録その③】
アメリア「アメリア。種族はエルフ。武器は弓。他に何も言うことはない」
キリエ「……えーと、なんか特技とかある?」
アメリア「殺人」
キリエ「オーマイゴッド……えっと、採用ね」
サラマンドラ「このチームは絶対うまくいかない気がするな」
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「はーい! それでは皆さんごちゅうもーく! これからこのチームのリーダーキリエちゃんが、今回の案件について色々説明しちゃいまーす!」
サラマンドラが帰った後、キリエは採用した3人の前で高らかに演説を始めた。
「まずは目標の確認ね! 今回の敵は農場主のラーニア=バロン! 各地から買い集めた奴隷を低賃金でこき使って、大農場を運営しているクソ野郎です! でも目標はあくまでこのアホを仕留めることじゃなくて、奴隷たちの安全を確保してを救出すること! 人命第一ってことを肝に銘じておくように!」
「それを聞いて安心しましたわ。もしそのバロンという奴を倒せさえすれば良いのなら、ワタクシが奴の屋敷に隕石を落とせば解決する話ですもの」
「はい今の発言、『頼もしいで賞』受賞!」
クソデカワイングラスを傾けながら、余裕たっぷりの笑みを浮かべるラファエルに対して、キリエは言った。
「次に私達チーム内でのルールを確認します! 本当は30か条あるんだけど、今この場では一番大事な3か条だけ教えます! その①『おやつはみんなで共有すること』、その②『仲間同士助け合うこと』、その③『殺しは禁止』、以上! なにか質問は? ……はい、アメリア!」
「私暗殺者だから、第3条をいつでも完全に守れる保証はない……どうにかならない?」
キリエは少し考えた後、3か条をデカデカと書いた紙に、その場で一文を書き加えた。
【殺しは(なるべく)禁止】
「これでどう?」
「……それならいけそう。ありがとう」
アメリアが頷くのを見たキリエは、会心の笑みを浮かべて指をパチリと鳴らした。
「ようし、それじゃあ最後に私たちのチーム名を発表します! 『ゴールド・ブレイド』がリーダーのチームだから名付けて……」
キリエは両腕を自身の眼前で交差させて叫んだ。
「『ゴールド・ブレイズ』!!」
「あぁ……それでいいんじゃない?」
「ワタクシもそれで構いませんわ」
「アタシは『荒ぶる大熊の騎士団』の方が良かったと思うんだけど……」
アメリアとラファエルの微妙な反応に対して、はっきりとした意見を口にしてくれたヴィッキーに、キリエは内心ほっとした。
「それは貴女の二つ名に使うといいと思うよヴィッキー。じゃあ早速だけど、皆で予行演習の場に向かうからね」