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第1話「めぐりあい牢屋」

ねえ、そこのキミ?


もしも明日死ぬとしたら、どんな死に方をしたい?


子供や孫たち、家族に手を握られながら看取られたい?


それとも静かな場所で独り、ひっそりと死に向き合いたい?


愛する人のために、自らを犠牲にしてドラマチックに死にたい?


いろんな考えがあるだろうけど、生まれ方が選べない分、死に方くらいは後悔しないように選びたいよね!



私? 私はね……。







取り敢えず、今みたいに牢屋にぶちこまれて「処分」されるのを待つだけっていうのはごめんかな……。



ーーーーーーーーーーーーーーーー


「特性の手枷のつけ心地はどうだね、『ゴールド・ブレイド?』」


冷たい鉄格子の向こうからキリエに話しかけてきたのは、とある国の巨大農場の持ち主で、国有数の有力者、ラーニア=バロン。傍らには、ヤマアラシの針のような髪型の、長身の男が冷たい笑みを浮かべて立っている。


「最高。おかげでスプーンも満足に持てやしない」


キリエは吐き捨てるような口調で言った。彼女の手首に嵌められている手枷には「バニリウム鉱石」が練り込まれており、能力(スキル)の使用を封じ込め、弱体化させる作用があるのだ。


「それはよかった。もし私の情婦にでもなるというなら今すぐその手枷を外して、牢屋から出してやっても構わんのだが」


キリエは返事をする代わりに両手の中指を立てて、下品なジェスチャーをバロンに突きつけた。


「もう1,2週間ここに閉じ込められたらその強情っぷりも保てなくなるぞ小娘。分かったらーー」


牢屋の中のキリエが息を呑んで壁際に身を寄せるのを見て、バロンの傍らにいた男はすかさず彼の襟首を掴み、鉄格子の方から引き離す。


それと同時に爆発音が鳴り響き、崩壊した牢屋の奥の壁から一人の男が姿を現した。


「あ、あいつは……『サラマンドラ』! どうしてここに!」


バロンは泡を食った様子で男を指差した。白髪交じりの髪の毛に幾つもの古傷が刻まれた肌、そして左目に眼帯をかけている。


「サラ!」


喜びの表情で光り輝くキリエの体を、無言で肩に担ぐサラマンドラ。そのまま自分が通ってきた抜け道を引き返して、牢屋を後にしようとする。


「撃ち殺せ、ジマー!」


ーー能力(スキル)発動・銃王無尽(フリーダム)


バロンの用心棒であるバルト=ジマーは能力(スキル)を発動させて生成した2丁拳銃をサラマンドラの背中に向けようとしたが、少しの沈黙の後にその銃口を下ろした。


「深追いは危険だぜ、バロンの旦那……。相手はあのサラマンドラだ。あの子供(ジャリ)のことはひとまず見逃して、抜け道を完全に塞ぐのを優先しよう」


「くっ……!」


バロンは屈辱に顔を歪めたが、ジマーの意見には納得せざるを得ないようだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


それじゃあ私が何であの牢屋で臭い飯を食べる羽目になったのか、順を追って説明するね!


「爆撃のウェンディゴ」をサラと片付けた後、私は奴らの取引相手の素性を探っていたの。奴隷の売買は買い手が存在しなきゃ成立しないからね。


そうして見つけたのがとある国の農場主、ラーニア=バロン。各地から買い取った奴隷を雀の涙の賃金で、自分の農場で働かせてた。私が元いた世界でいうと「プランテーション」ってやつ? 金持ちの考えることって、どこ行っても変わんないよね!


まぁそんなわけでそのラーニア=バロンを叩きのめして、奴隷たちを解放するためにカチコミかけたはいいんだけど、連中の戦力が思いの外強大で、おまけに能力(スキル)持ちもいたもんだから健闘むなしく捕まったってわけ。


うーん……こうして整理してみると、私って大分刹那的な生き方してるね!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ああその通りだよクソッタレ!」


事の経緯を説明していたキリエの体を、サラマンドラは抜け道の途中で投げ落とした。


「お前の尻拭いのために、何ヶ月も整備していた抜け穴の存在を連中にバラすことになっちまった! それだけの価値がお前にあるといいけどな!」


「抜け穴の整備って……もしかしてあんたもバロンの農奴たちを助けようとしてたってこと!?」


憤然として抜け道の出口へと進んでいくサラマンドラの背中に追いつきながら、キリエは尋ねる。


「んなわけあるか。俺は雇われたんだよ。取り戻す者たち(リディーマーズ)にな」


抜け道から這い出し、夜空の下で大木に繋がれている馬に跨りながら、サラマンドラは答える。


取り戻す者たち(リディーマーズ)って……奴隷解放組織じゃん! てことはこれから行く場所って……」


「連中の本部だ。いいか、しっかり捕まってろよ」


サラマンドラはキリエが自分の後ろに騎乗したのを確認すると、手綱を握り、街の方へと馬を走らせた。

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