救世主が救われるための物語
悪魔に支配された世界。
悪意に屈するしかなかった世界。
ーー世界の最果てで、二人の"生贄"は出会った。
片方は平凡な青年、もう片方も平凡な町娘。
世界のために、その言葉で担ぎ上げられただけの、どこにでもいる男女だった。
「お前、そんなとこで何してんだ? 落ちるぞ」
「ええ、落ちてしまうのが目的ですから」
「ーー」
「わたくしは、悪辣なる魔の物どもから村をお守りする尊い使命を」
「そんなに足震えさせて言う台詞じゃねぇな」
「……っ」
少女が立つのは崖の上。眼下には急流が押し寄せる海が広がり、ゴツゴツした岩も目立つ。
さぞや落ちれば痛かろう。
青年の言葉に反応して、己の震える足に力を入れる少女。だが震えは治るどころか増す一方だった。
「なぁ、一つ良い提案があるんだ。聞いてくれるか?」
「俺と一緒に、逃げないか?」
これは、とある逃げ出した救世主たちの、旅の物語。
*************
聖女アルフには使命があった。生まれつきの使命だ。それは15歳の夜に、月に命を捧げ、この世に平和をもたらすというものだった。
2020/09/24
自分と主人公たちの旅が始まりました。
この作品が誰かの心を揺さぶる物語になることを祈っています。