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21.運営イベント



「つまり、君があのゲームのイラスト担当なのか?えと……絵心(えごころ)さん」

「は、はい……関わってるのは、イラストの提供だけです、けど……」


 そう話すのは、どこからかオドオドと擬音が聞こえてきそうなほどに怯え切った一年生の女子生徒……絵心影華(えいか)


 ぴょんぴょんとあちこちに跳ねた黒髪と言い、それでギリギリ見えるほどに隠された両目といい、そしてそのしどろもどろに話す性格も相まって……まあ見た目通りの、そういうキャラの女の子らしい。

 

 そして、根津鳥の数少ない友人の一人でもある。

 

 ……失礼な話ではあるが、根津鳥とは色々と対照的な女の子だ。

 身長こそほぼ同じだろうが、体つきは細身であり、性格も随分と内気なようで……どうやって知り合ったのか気になるところである。


 しかし今は何よりも、彼女があの恋愛ゲームの作成者の一人であるという事実に驚きだ。


「てっきりあいつが一人で作ってるものだと……」

「わわ私はイラストだけです!な、なのでヒントとか全然分かんないですごめんなさい!先輩がそのゲームをやってるのも今初めて聞きましたし……」

「そ、そうなのか?」


 では彼女が今胸に隠すように抱えているノート……それを俺が見た時の怯えようはどういうことだ?

 俺があの恋愛ゲームの被害者と知っていて、その制作に関わっていたことがばれたのを恐れたんじゃないのか……?


 自分で言うのもなんだが、あのゲームは殺意が湧くことも少なくないし。

 まあその殺意さえも、ヒロインたちに殺されてしまうんだけどね。はは。


「だ、だって……気持ち悪いですよね?こんなオタクみたいな……」

「あー……」


 そういう……。

 確かにこういったアニメや漫画、ゲームに偏見を持つ人もいるだろう。でも今時はそういう偏見こそが時代遅れじゃないか……?


 というかまさに現在進行形で俺がその手のゲームをやっているのですが。


「えと……そのイラスト作成ってさ、あいつに無理やり強制されて」

「それはないです!私が好きでやってますっ!」

「お、おお。そうなのね……まあそれなら問題ないだろ。俺も君のイラストは可愛くて好きだし」

「ほ、ホントですか!?」


 うん、イラスト()。イラスト()ね。ここ大事。テストに出るくらい大事。


 ……待って。そう言えばこの子さ、自分のイラストがあんな化け物たちの生贄にされてることは知ってるの?


「えと、わ、私はイラストを買われた訳なので……あの人の希望通りの絵を描くだけなので……性格については……です……」

「つまりあいつが諸悪の根源なんだな。良く分かった、ありがとう」

「そ、そんなに酷いゲームなんですか……?」

「女性恐怖症、人間不信、その他諸々の症状が併発しかける出来とだけ言っておくよ」


 それを聞いた絵心は見るからに引いていた。


 むしろなぜあんな恋愛ゲームのイラスト担当など名乗り出たのか……。


 聞くに、諸悪の根源であるあいつと知り合ったのは彼女が中学三年のころだと言う。つまりあいつは高校一年の時……インターネット上でイラストを投稿していた彼女に目を付け、それらを使ってもいいかと連絡が来たのだそうだ。


 中学時代も今と変わらずアニメキャラや女の子のイラストといったジャンルで話せる知り合いなどいなかった絵心は、喜んでその頼みを承諾。


 アプリ型の恋愛ゲームに使うこと、こちらの指示に沿ったイラストを描いてもらうことなど説明を受けた上での承諾だったが……性格が悪魔の依り代にされるとは知らなかったそうだ。


「直接会ったことはないのか?」

「あ、ありません……この学校の先輩であることは知ってますけど、お名前も聞いたのはネット上の偽名ですし……あの人も私が一年生ってことしか知らないと思います……」


 なるほど……。

 本当に偶然ではあるが、彼女と知り合えて良かった。

 それに彼女があの恋愛ゲームの全容を知ったうえで協力していた訳ではなかったのも幸いだ。こう言っては何だが、承知の上であのゲームの作成に関わっていたのなら、犯罪の片棒を担いだものと同じでしょ。


「ごめんな、色々と聞いちゃって……」

「い、いえ……その、最後に一ついいですか……?」

「なんだ?」

「えと、み、皆田先輩って、凛さんとも親しいんですよね……でしたら、その……私がこういうイラストを描いてるのは、内緒にしてもらえませんか……?」


 ……それは構わないけど、なぜ?


「き、気持ち悪いとか……嫌われたく、ない、ので……」


 咄嗟に、あの根津鳥ならあり得ないと答えそうになるが……彼女の身体が少し震えていることに気付く。

 絵心からすれば、本気で心配なのだろう。


 ならば、これは彼女と根津鳥の問題であり、俺が変に関わるべきじゃないか……


「分かった。黙っとくよ」

「あ、ありがとうございます……」

「それとあれだ。あのゲームの運営をしてる奴なら、二年三組の瓶底眼鏡をかけた男子だから、何かあれば直接話してみるといい」


 彼女いわく、ネット上とは言っても初めて話が合った奴だ。

 せっかく同じ高校にいるのだから、直接話してみるのもいいだろう。何ならあの怪物たちを作り出した文句を言って欲しいけど。


「わ、分かりました……私ももし()()()の方に会ったら、そうお伝えします……」

「ああ。じゃ、そろそろ俺も失礼し……」



 ……三人目?



「で、では失礼しま」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。三人目って誰のことだ?」


 話がまとまりかけていたのに、また訳の分からない人物が出てきた。

 三人目って何?


「えと、声優……ボイス担当の方のことですが……プログラミングや音響が運営さん、イラストが私、ボイスの人が三人目ですので、三人目と……」


 そうなの!?あの恋愛ゲームを三人がかりで作成していたことすら初耳なんだけど……


 いや、だから待て待て待て。


「“三人目に会ったら”っていうのは……」

「ご、ご存知ないのですか?()()()()()()()()()()()()()よ……ボイス担当の方も」




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[一言] あのセリフ人だったんだ... そんなぁ...
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