告白
「ずっと前から好きでした……俺と付き合って下さい……!」
言った。ついに言ってしまった。
それはとても短い言葉だけれど。ありきたりな告白文句かもしれないけれど。そこに俺の全ての想いを込めて、彼女へと届ける。
温かい夕日が包む学校の屋上。校庭からは青春の掛け声が聞こえてくるが、それがとても大きく聞こえる。唇が渇き、呼吸が少しだけ不規則なものに変わっていたことに気付くのは、告白から数秒経ったときだろうか。
今この時間だけは、俺と彼女だけの時間だ。
彼女がゆっくりと振り返ってくれた。その表情は、俺が好きな暖かい微笑みだった。もうずっと見てきたはずなのに、全く見慣れなくて、未だにどきどきと胸が鼓動する微笑み。
ゆっくりと歩み寄ってくれる彼女。
そして……
「あなたとは付き合うどころか、友達とも思っていないので……ごめんなさい」
そして彼女はまた、優しくほほ笑んだのだった。
~終わり~
……くそっったれーーーーーーっっっ!!!!!!!
「ぐ、ふぐっ……うぐうぅ……っ!」
まじで何なの、この恋愛シミュレーションゲーム!!?
涙が溢れて止まらないよっ!!
そのセリフは女神のような慈悲深い笑みを浮かべながらいうことなの!?完全にサイコパスだろうが!俺にそっちの性癖はないぞ!?
しかも告白が音声入力って何!?
嘘とは言え、こちとらしたこともない初めての告白だったんだぞ!?大切な初めてを奪っておいてよくそんなセリフが吐けるな!?さっきまではそんな素振り見せなかったろうが!!
そしてお前が学校の屋上で告白しろって条件を出すから、こうして立ち入り禁止の屋上に来てやったんだ!無駄に凝ったGPS機能とかいらないんだよ!!
「ぐふっ……そうか……聞いてくれて、ありがとなっ……」
そしてこのセリフを言わないと、他のヒロインの好感度にもひどい影響が出るから言わないといけないし……!
何が『新作の恋愛シミュレーションのアプリ試運営に付き合ってくれ』だ……あいつ、俺のことを遠回しに殺したいだけじゃない……?
「か、帰ろう……耐えられない……」
このアプリに付き合っていたら、俺は確実に精神を病む……何とかしなければ……。
今日は帰ろう。帰って……寝よう。
「しかし屋上で良かった……こんなとこを誰かに見られてたら黒歴史確定だ……」
「光樹が……告白……そんな……っ」
彼女が一人、涙を流していたことを……俺が知ることはなかった。