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異世界に行ったら世界のすべてが所有物だった!  作者: カビ封じ
一章 ~博愛無き医師達~ 一節『薬盗りの少年』
6/10

一話 楽しい楽しい大事件


 どうしよう。

 凄く楽しそうな事件の臭いがする。

 

 私の向いている方角の路地裏から聞こえてくる野太い罵声と暴行の音。

 少年か少女か分からないけど、悲痛な声にうめき声。 

 町の人は我関せずで素通りする中、私は暴行の音が聞こえる路地裏に目が釘付けだ。

 

 ああ、ホントに楽しそうな事件の臭い!

 やっぱり異世界はこうでなくちゃ!

 

 とりあえず、今までの経緯を説明しておこうか。






 街の散歩の為、手配してもらった馬車で防壁の内側にある検問所まで来た。


 身を隠す為にマーカスから貰った、リネンの布で出来たフード付きのマントで身を隠し、検問所を通る。

 内側から出るからか、検問所の人は何もチェックが無い。

 そんな警備で大丈夫か?

 いや……大丈夫だと信じよう……


 まあ変な奴が白銀邸に入ってきたら、それはそれでTHE異世界転生!って感じで面白そう。

 よくある異世界転生小説の主人公達は「面倒事かよ……」とか言っているけど、普通に面白いよ!

 最高に心躍るイベントだよ!

 楽しまなきゃそんじゃない?


 でも、そういうイベントは早々起こらないよね。

 分かってますよー。

 リアルと小説は違いますよー。

 さて、古代エジプト似の町並みを楽しみますか!






 防壁を潜ると防壁の外は賑やかだ。


 防壁の入り口近くで屋台で魚が売ってる!。

 屋台を切り盛りしているおじさんは、通りすぎる人に声をかけている。

 防壁を抜けた先、すぐ目の前の魚の屋台は、おばちゃん達の人気者だねー。 


 右も左も色々な店が並んでる。

 先ほどと同じ様な魚屋に、果物屋。

 八百屋に、肉屋。

 肉の串焼きを焼いてる店もあり、人が並んで繁盛している。

 町の大通りに並ぶ屋台はどれもゲームで見てきた簡素な木造だったり、石材だったり。


 右の通りでは値切り交渉をしている常連客と思しき人と屋台の店主。

 彼らは談笑しながら楽しそうに値切り交渉していて、生き生きとしているね。




 

 私は彼らの顔を見ながら先に進んでいると、遠くの方で何か喧嘩の様な雰囲気が見えた。

 だいぶ距離があるから、何が起こっているのかわからないな……

 

 見えるのは男三人と子供一人……

 子供がどこかに連れていかれている。

 周りの大人たちは何かを言っているが、男三人は聞く耳持たずか。


 周りの大人達の説得は虚しく、子供が路地裏に引きずり込まれた様だ。

 説得していた大人たちは諦めたのか、散り散りに去っていく。


 これは……

 事件の予感!

 

 走り、子供が引きずり込まれた場所に向かう。

 引きずりこまれた子供には悪いけど、私は今、凄いワクワクしているのだ。

 さあ、引きずり込まれた子供よ!君は私にどんな大冒険を見せてくれるのか!?






 そして現在。

 引きずり込まれた子供と思しきうめき声と、野太い大人の男の声が聞こえる路地裏を見ている。

 先ほどから引きずり込まれた子供の声は聞こえず、うめき声しか出していない。

 

 はっはっはー!仕方ない!少年か少女か分からないが、この世界の支配者たる私、ナナシ様が手を差し伸べてやろうではないか!

 はーっはっはっはっは!


 というわけで路地裏に突入する。

 路地裏は狭く、時間的に日陰が多くなり薄暗い通路だった。

 

 狭い通路を進むこと凡そ十メートル。

 通路の先は、広さ六畳程の物置に使われている空間が広がっていた。

 

 狭い空間に居るのは、腕を縛られ生気を感じられない黒い瞳をした黒髪の少年と、柄と頭の悪そうな三人の男達。

 三人の男たちに足蹴りされているのに、少年は小さな呻き声しか上げていない。

 フム……。


「ちょっと失礼?」


 私に声をかけられ少年に暴行を加えていた男たちが振り向く。

 しかし、私は構わず言葉を続けた。


「皆さんここで何してるのですか?見たところ、その少年は喋れない位にはぐったりしてますが」


 最初は私に驚いていたようだが、私の体を見てから互いに顔を見合わせ始めた。

 考えている事バレバレすぎ……

 私の問いに男達はヘラヘラと笑いながら答える。

 

「俺ぁここに居る小汚い泥棒を懲らしめてるところでしたでさぁ!」

「店主に商品の行方を報告せなアカンでなぁ!ちょっぴり質問しちょるだけでさぁ!」

「高い薬盗まれたてぇ店主悲しんでたでまんねん!ぜってえ在り処を吐かせるつもりでさぁ!」

 

 ウーム、この男の言い分では、少年は薬屋から薬を盗んだって事か。

 で、盗んだ商品の場所を尋問していると。

 ウム、筋は通る。

 でもその割には……

 

「その割には、言葉も出ない程弱っている見たいですが……そんな状態で話せるとは思えませんよ?」


 私の言葉を聞いて、男たち再度顔を見合わせる。

 こいつら顔を見合わせるの大好きだよね。

 顔見合わせるの二回目じゃん。


 男達は顔を見合わせた後、ヘラヘラとした笑みを浮かべて私ににじり寄ってくる。

 

「おーおー、英雄気取りの嬢ちゃんかー!俺らさぁ……遊び足りないんだよー」

「俺らテクニシャンだからさぁー。ぜってー後悔しねーぜー?」

「そうそう!俺ら相手にした女達はみーんな昇天してダブルピースだぜー?」

 

 やべぇ……

 突拍子も無く、いきなり体要求してきた。


 しかも、こいつ等自信過剰すぎない?


 そんなに凄いモノをお持ちですか?

 そこまで言うなら、むしろ見てみたい(笑)

 

 まあでも……こいつらのテクが凄いか凄くないかは、ぶっちゃけどうでも良い。

 私は地面で倒れている少年を助けに来たのだ。


 気持ち悪い笑みを浮かべながら近づく男達。

 私の腰に腕を回し……


 男の腕を勢い良く払いのけて、二歩下がる。


「おいおい!今更ビビッちまったk……ウグゥ!」

 

 私の腰に手を回していた男が突然呻き声を上げて倒れた。


「ほんっとに、これだから性欲の塊は……」


 何も対策無しで突入するなんてあり得るわけないじゃん。

 バッカでー。

 

 倒れた男の胸にはショートボウの矢が刺さっている。

 胸に刺さった矢は深く突き刺さっていて、恐らくこの男は動くことは無い。

 突然の仲間の死に、男達は慌てふためく。


「くそ!どこだ!?」


 仲間の死体に刺さった矢を見て二人の男達は周りを見渡しているが、誰も見つけられないみたい。

 仕方ないなー……


「上だよ」


 上を指さす私。

 そんな私を見て、男達は上をみる。


 そこには沢山の黒いフードを被った私の護衛が建物の屋上でショートボウを構えていた。


 実は、外に出る時に私は追跡されている事を不思議な第六感で知っていた。

 その追跡者に敵意が無い事はわかっていたので、これ絶対護衛だねって判断したのさ!

 実際に仕事した護衛の諸君、お見事。

 

 私の護衛を見た男達は、悔しげな表情で私をみている。

 

「くそが……お貴族様かよ……!」

「兄貴!ここは逃げましょう!」


 そう言って男達は逃げていく。


 私は男を走り去っていくのを眺めた後、少年に駆け寄り様子を見る。

 まだ生きているみたい。

 

「よし!すぅー……」

 

 私は息を吸い、体に伝わる不思議な力に集中する。

 その不思議な力に治療の概念を乗せ、少年に振りかけた。


 辺りは眩い光に包まれ、やがて光が収まる。

 光に包まれた少年の怪我が嘘のように消えていた。


 とりあえず、これで大丈夫かな。

 意識を失っているけど、すぐに目を覚ますと思う。

 

 少年を抱えて路地裏を出る。


 男の死体は護衛にお任せしようと思う。

 私は基本人任せなのだよ。  



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