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07.ヒロインレイラのお買い物

「いらっしゃいませ~!」


 今日はお父さんのお店の手伝いをする日。

 王立ヴィクトリア学院に入学するまでは毎日手伝っていたんだけど、勉強や試作品を作るのを優先しろってことで、週に一度、片方の休みの日だけ手伝うことになったんだ。

 それが今日ってこと。


 お店の目立つところに、昨日作ったナッツののった絞り出しクッキーを置いてもらった。

 売れれば全額、私のお小遣いにしていいって、昨日のうちにお母さんがお父さんと交渉したらしい。

 家にある材料を使っているんだから、もらえるのは一割くらいかなって思ってたんだけどね。


「お? 今日はアーシュラちゃんも店番してるんだな。オススメはあるかい?」


 常連のおじさんがふらっと店に入ってきてそう言った。

 ときどき来る気のいいおじさんなんだけど、いつも大量に買い込んで、外に待たせている馬車に乗せて帰るから、もしかしたら、貴族の人がお忍びで来ているのかも。


 ああそうだ。うちの商会は大きいので、私以外にも従業員のお兄さんやお姉さんがいるんだよ。

 

「おじさんいらっしゃい。今日のオススメは、私が手作りしたお菓子なんてどうですか?」


 私は商魂たくましく、自作のお菓子をオススメした。

 おじさんは何度かぱちくりと目を瞬かせたあと、にっこり笑ってお菓子の入った袋を取った。


「アーシュラちゃんが作ったんなら食べてみないとな! じゃ、これとあとは……」


 おじさんはお菓子以外にも色々と買っていった。


 こんな感じで私が作ったお菓子はぽつりぽつりと売れて、お昼前に残り一袋になった。

 最後は誰が買うかな?  なんて思いつつ、これまた常連のお客さんの接客をしていたら、ピンクブロンドの髪を首の後ろで一つにまとめた女の子が店に入ってきた。


 あんな髪色してるのって、ヒロインのレイラちゃん以外にいないよね……。


 私は気づかれないようにそっと顔を盗み見た。

 神秘的なアメジスト色の瞳をした美少女が必死な感じで何かを探している。


 あ? もしかして、チュートリアルで作る絞り出しクッキーの材料を買いにきたのかな。

 うちのお店は、私がお菓子作りをする関係で種類豊富なんだよね。


 レイラちゃんは、売り場の隅から隅まで歩き、大きくため息をついた。

 目的のものが見当たらなかった……っていう感じかな。


 ここは声をかけて、何が欲しいか聞く場面だけど、あいにく私は接客中。

 従業員のお兄さんかお姉さんが気づいて声をかけるのを願うしかない。


「アーシュラちゃん、やっぱりこっちにしようかな?」

「その色もいいですよね」


 接客中の相手である近所のおばさ……お姉さんに呼ばれたため、レイラちゃんから目を離した。


 その直後、レイラちゃんの声が聞こえた。


「なーんだ、売ってるじゃない! そうよ、私は……」

「アーシュラちゃん、これにするよ!」


 後半はまたもお姉さんに話しかけられたため聞こえなかったけど、レイラちゃんの探しているものが売っていたようだ。


 お姉さんの会計を済ませたあと売り場を見れば、機嫌良さそうなレイラちゃんがお店を出て行くところが見えた。


 何を買ったかはわからないけど、気分よく買い物をしてもらえるのはいいこと。

 その後、私も気分よく接客ができた。

 

 しばらくして、私が作ったナッツをのせた絞り出しクッキーが売り切れていたことに気がついた。

 最後の一つは誰が買ったのかわからなかった。

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