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04.お菓子好きな黒猫さん

ブクマ・評価ありがとうございます!


★注意事項★

文中に猫さんにお菓子をあげるシーンがありますが

想像上の世界だからできるのであって

現実では絶対にあげないでください

現実の世界では猫さん専用のおやつをあげましょう

 両親に四色のスノーボールを見せると、盛大に喜んでくれた。


「おお! 母さんが作ったやつに色をつけたか。黒っぽいのがココアで、こっちがきなこか」

「こっちは抹茶とイチゴね。通常の白いものと合わせれば五色。なんてカラフルでかわいいのかしら!」

「商品化するなら、カラフルなほうが売れるかなって」


 私の言葉に二人は大きく頷いた。

 見た目の確認が終われば、試食タイムだ。


「ん!? 中の生地にもパウダーを混ぜたのか。これはほんのり苦くてうまい」

「食べるとイチゴの香りが広がって、おいしいわ~!」


 すべての種類のスノーボールの味を確認すると、二人はすっと真面目な顔になって話始めた。


「これは真似されないうちに商品化して、すぐに陛下へ献上しよう。特許の申請も出すか」

「そうね。こういったかわいらしいお菓子は王妃様が好きそうだもの。献上するのはいいとして……ああそうだわ、アーシュラちゃん。見本にしたいから、もう一セット分、もらってもいい?」


 食べる分が減る!? と思ったけど、商売が絡んだときのお母さんには逆らえないので、素直に渡す。


「はい、どうぞ」

「ああそれと、アーシュラちゃん。この四色のレシピもちょうだいね」

「はーい、部屋で書いてくるね」


 私はそう言って、そそくさとその場を離れた。

 これ以上いると、二人の話し合いがヒートアップして、席を離れられなくなるから、今がチャンスなの!


 向かったのは自分の部屋。

 私の部屋は一階の一番奥にある。裏庭に面していて、窓からは生垣と桜の木が見えるんだ。

 ちょうど桜が満開の時期だし、窓辺に椅子を運んで、お花見しながら食べるのもいいよね。


 レシピ書かなくていいのかって?

 ちゃんと、食べ終わってから書くよ。

 忘れると怒られちゃうからね。


 桜がひらひらと舞う庭を見ながら、ココア味のスノーボールを口に入れる。

 サクサクとした食感と、ほんのりほろ苦いココアの味。

 う~ん、やっぱり手作りお菓子は最高!

 作ると楽しいし、食べるとおいしい。幸せだね!


 今度はイチゴ味のスノーボールを口に入れようとしたら、にゃあんという鳴き声が聞こえてきた。


「ん? 猫?」


 このあたりで猫ってあまり見かけないんだよね。

 もしかしたら、どこかの家の飼い猫が逃げたのかもしれないな。


 なんて思いながら、庭をきょろきょろと見回していたら、桜の木の陰から金色に近いトパーズ色の瞳をした真っ黒い猫が現れた。


 黒猫は私の顔というか手をじっと見た後に、とてとてと歩いてきて、ひょいっと窓を乗り越えて部屋に入ってきた。


「えええ!?」


 猫ってこんなにあっさりと人の家に入ってくるものなの!?

 口をぽかんと開けていたら、黒猫はさらに驚きの行動をとった。

 なんと、机の上に乗り、私が作ったスノーボールを無断で食べ始めたのだ。


「ちょ、ちょっと! 黒猫さん! 勝手に食べちゃダメだって!」


 そういうと、黒猫は食べるのを止めて、にゃあんと鳴いて……またがつがつと食べ始めた。


 まるでいただきますって言ったようにも感じたけど……ってそうじゃない!

 猫ってお菓子を食べてもいいの!? お腹を壊したりしない!?


 私は慌てて黒猫を掴んで、食べるのをやめさせた。

 すると、シャーッっていう鳴き声と背中の毛を逆立てはじめて……つまり怒り出したので、怖くて手を離しちゃった。


 黒猫は私の手から逃れるとまたスノーボールを食べ始めた。

 お腹空いてたのかな……。

 これはもう、諦めるしかない。


 しかし、すごい勢いで食べる食べる。


「おいしい?」


 って、猫相手に何を言ってるんだろう。


 と思ったんだけどね……黒猫はにゃあんと鳴いた後に、またしてもスノーボールを食べ始めた。


 おいしいって返事したように感じたけど、きのせいかな……。


 結局、黒猫にすべてのスノーボールを食べられてしまった。

 私は最初に食べたココア味と手に持っていたイチゴ味の合計二個しか食べてないのに、この黒猫はなんと十八個も食べてしまった。

 本当に大丈夫なんだろうか?


 体調おかしくなったりしないかな? と思って、じっと見つめていたんだけど、黒猫は口の周りについているスノーボールの粉を丁寧に拭っているだけで、なんともないっぽい。

 この世界の猫だから、大丈夫なのかもしれないね。


 黒猫は私の視線に気がついたようで、机からひょいっと降りると私の足に頭を摺り寄せてきた。


「うう、めっちゃかわいい……!」


 首輪やリボンをしていないところから、どこかで飼われている猫が脱走……というわけではなさそうだけど、すごくきれいな毛並み……。


 そっと首の下に手を伸ばし、のどの下あたりをこちょこちょっと撫でる。

 黒猫はのどをならして、気持ちよさそうだ。

 ひとしきり撫でて手を離すと、黒猫はにゃあんと鳴いて、外へ出て行った。

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