21.生クリームたっぷりのプリン
クロスが好むだろうと思って、ラム酒の効いたティラミスを作ったんだけど、味見をしただけで酔っぱらってしまった。
スプーン三杯分くらいしか食べてないんだけどね。
どうやら、今の私はお酒に弱いらしい。
酔っている間の記憶は、残念ながらはっきりと覚えている。
誘導尋問みたいな形で、クロスを好きなのだと自覚させられて、告白のようなものをしてしまった。
とても恥ずかしいので、できれば酔っている間の記憶は忘れたことにしたい。
覚えているなんて知られたら、クロスのいいようにされるだけだもんね。
よし、ここは冷静になろう。
冷静になるためには、お菓子作りが一番だよね。
何を作ろうかな……?
そうだ。初めてクロスと会話した日に、生クリームたっぷりのプリンを作るって言ったっけ。
って、クロスとの出会いを振り返るとか、ぜんっぜん冷静になれてない!
私は深いため息をついたあと、試作用キッチンでカラメルソースを作り始めた。
・砂糖
・水
カラメルソースは、砂糖と水だけでできるんだよ。
鍋に砂糖と水を入れて、いい感じの色になるまで焦がして、そこに水を入れてソースっぽくする。
それをガーター商会の印が入った瓶に底が見えなくなる程度に注いでいく。
次にプリン本体のほうを……。
・卵
・砂糖
・牛乳
・バニラエッセンス
卵に砂糖を入れてよく混ぜる。
熱した牛乳にバニラエッセンスを加えて、そこによく混ぜた砂糖入り卵を入れる。
一度、こしてから、瓶に注ぐ。
今回は出来上がったものにクリームやフルーツを乗せて、蓋をする予定なのでプリン本体は少なめに入れる。
それを蒸し器で蒸せば、プリンは完成。
生活魔法で冷やした後に、蒸している間に作った生クリームやキウイ、ベリーなどで飾り付けて、蓋をする。
瓶に入ったプリンアラモードって感じかな。
試作用キッチンの大きなテーブルの上にずらっと並んだ売り物のプリン。
すべて、ガーター商会の印の入ったかわいい瓶を使っている。
プリンの色がお父さんの考えたデザインを引き立たせて、よく見えるんだよ。
やっぱり、このデザインかわいい!
お父さんのセンスを見習わなきゃね。
売り物のプリンは試作用キッチンの冷蔵庫にしまっておいて、私とクロスの分を抱えて部屋へと戻った。
部屋では珍しくクロスが人型のまま、ベッドの縁に座っていた。
「今日は前に作るって言ったプリンだよ」
クロスは興味津々といった様子で、プリンの入った瓶を見つめていた。
「この底の茶色いものも食べるのか?」
「うん。それはカラメルソースって言って……苦くて甘いんだよ」
クロスは頷くとプリンを食べ始めた。
するとシュークリームのときのようにものすごい勢いで食べた。
「これは、この間のてぃらみすを超える菓子だ! 上に乗ったクリーム、添えてあるフルーツの酸味、ほどよい硬さのプルプル、そしてほんのり苦い底にあるからめるそーす……。この組み合わせは最高だな」
クロスは感想を述べると、私の分のプリンに視線が釘付けになった。
「食べたいの?」
「うむ。アーシュの分だとわかっているが、食べたい」
「しょうがないな~」
私はそう言って、クロスにプリンをもう一つ渡した。
クロスは目を輝かせたあと、今度は一口ずつ味わうように食べ始めた。
子どもみたいなそんなクロスを見て、私はこっそり、くすっと笑った。




