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17.スコーンとリンゴジャム

 学院教師であるユリシーズ先生って実は養子で、もともとはリンゴ畑が広がる田舎で両親と暮らしていたんだ。

 ところが、本家の嫡男が病気で亡くなって、急遽、分家筋のユリシーズ先生が引き取られたの。

 亡くなった嫡男が優秀だったらしくて、養子のユリシーズ先生は比較されながら厳しい教育を受けて、なんやかんやあって今は学院で先生をしている。


 だから、リンゴジャムはユリシーズ先生にとって、両親との思い出なんだって。


 リンゴジャムだけ差し入れするわけにいかないから、セットでスコーンも用意するんだけどね。


 というわけで、私は試作用のキッチンへ向かうと、スコーンの材料を集めた。


・薄力粉

・ベーキングパウダー

・バター

・砂糖

・牛乳


 まずはオーブンに火入れをしておいて……、バターは冷たいままサイコロくらいの大きさに切っておく。

 薄力粉にバターを入れて、ザクザクと混ぜる。

 ザクザクな感じになったら砂糖を入れて、そこに牛乳を少しずつ入れて、またザクザクと混ぜる。


 スコーンって混ぜすぎちゃダメなんだよね。

 大雑把な感じで作るのがコツ。

 それを分厚く平らにして、三角形になるように切って、天板に並べて、オーブンへ。


 焼き上がりを待つ間に、リンゴジャムを作ろう。


 ゲームでは季節関係なくフルーツが手に入ったけど、現実では難しい。

 だけど、ここはガーター商会の試作用キッチン。

 ありとあらゆるものがある……ハズ。


 よかった! 真っ赤なリンゴがあったよ~。


・リンゴ

・砂糖

・レモン汁


 まずはリンゴの皮をむく。皮はあとで使うから分けておいて。

 次に芯は捨てて、身の部分だけを細かく刻む。

 そこに砂糖を入れて、しばらくおいておく。

 その間に、リンゴの皮を煮て、色の着いた煮汁を作る。

 

 今回は真っ赤なリンゴだし、皮も細かくして入れちゃおう。

 ミキサーはないから、蓋つきの瓶に入れて、生活魔法を駆使して細かく刻む。

 間違って瓶ごと刻まないように気をつけながらね!


 砂糖を入れたリンゴの身と細かくしたリンゴの皮の煮汁をひとつの鍋に入れて、やわらかくなるまで煮る。

 一度火を止めて、レモン汁を加えたら、ジャムっぽくなるまで煮詰める。

 あとは熱湯消毒した小さな小瓶に詰めていく。


「真っ赤なリンゴだったから、すごくきれい~!」


 そう独り言をつぶやいていたら、お母さんがやってきた。


「今回はリンゴジャム? 焼いているのは、スコーンかしら?」

「うん。たまには定番のお菓子もいいでしょ?」

「そうね」


 スコーンやジャムはもともとこの世界にもあるお菓子なので、お母さんは試食をしたがらなかった。


 オーブンから天板を取り出して、粗熱を取るためにスコーンをお皿の上に乗せた。

 黙々と作業を進めていると、お母さんが首を傾げた。

 

「ねぇ、アーシュラちゃん」

「なぁに、お母さん?」

「これからは売り物にするお菓子には、ガーター商会の印を入れたほうがいいと思うのよね」


 言われてみれば、今までそういったことはしていなかった。

 試作品の売れ行きテストとか、私のお小遣い稼ぎだとか言っても、これはきちんとした商売だ。

 もっとガーター商会で売ってますってアピールしたほうがいいよね。


「たしかに入れたほうがいいね。このジャムだったら、印の入ったリボンでもつける?」


 私がそう提案すると、お母さんは首を横に振った。


「それだとリボンを取ったらすぐにわからなくなるわ~。どうせなら、瓶そのものに刻印しましょ!」

「それなら印だけじゃなくて、かわいい飾り模様とかも入れたらどうかな?」


 ぽつんと刻印だけがあるよりも、飾り模様を付けたほうが目立つと思うんだよね。


「そうね! デザインも考えなくちゃ。作り終わったら、お店のほうに顔を出してね!」


 お母さんはそういうと、お父さんのいるお店のほうへと向かっていった。


 私は粗熱の取れたスコーンと瓶詰にしたリンゴジャムを袋に入れて、可愛くラッピングしていく。

 だんだんラッピングもうまくなっているかもしれない!

 

 売り物と食べる分を部屋へと運んで、クロスには先に食べてもらって。

 すぐに、私はお母さんとお父さんのいるお店へと向かった。

 

 結局、夜遅くまで瓶につける模様について話し合ったんだけど、お父さんが出した案が一番可愛かったという……。

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