表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/30

02.魔法学者の令息【モーリス様との出会い】

ブクマ・評価ありがとうございます!


本日は朝と夜で2話投稿しています。

 王立ヴィクトリア学院はコンフィ王国に住む魔力を保有する者が十五歳になると必ず通わなければならない学校で、魔力の量によってクラス分けされる。

 この魔力の量っていうのは、人の頭くらいの大きさの丸くて黒い『魔力測定器』に手を置くことでわかるんだ。

 魔力のない人は黒いまま、ある人は青から緑、黄色、赤の順で多い人ほと赤に近づくんだ。

 

 入学前に受けた魔力量測定で、私は『魔力測定器』を真っ赤にした。

 つまり、魔力の量が多い……というわけで、一番上のクラス……Sクラスになった。


 ……うおおおお! 神様ありがとう!!

 魔力のめっちゃ多い平民にしてくれて、ありがとうう!


 私は存在するかわからない神様に向かって手を合わせて拝んだ。


 それというのも、Sクラスには『スイーツ~恋する乙女~』に出てくるキャラクターが何人もいるのだ。

 ヒロインでしょ~。王太子のデリック殿下でしょ~。王太子の婚約者のウェンディ嬢に魔法学者の令息のモーリス・ヤーノルド様!

 同じクラスなら、課金スチルの現場に居合わせても違和感ないはず!


 ちなみに、スージーは一番魔力の少ないCクラスにいるよ。


 さてさて、次の出会いイベントは教室。


「キミ……」

「え? なぁに?」


 ヒロインの隣の席に座ることになる魔法学者の令息のモーリス様は、人並み外れた魔力を持っていて、普通の人では見えないと言われている属性が見えちゃうんだよ。

 モーリス様って、人と関わるのが苦手で目元を隠すように白に近い銀色の髪を伸ばしてるんだ。

 でもその髪の奥には、輝くようなきれいなアクアマリン色の瞳を持っていて……もちろん、顔は超絶イケメン。

 

 たしか設定では、幼少期にあまりの美しさに女性だけでなく男性にまで囲まれてもみくちゃにされたのがトラウマで前髪を伸ばして隠すようになったんだっけ。

 それで人間不信というか、対人恐怖症とか……かわいそうだよね。


 そんな哀れなモーリス様は、まだヒロイン自身もどんな属性を持っているか知らない時期に、ヒロインが光属性持ちであることに気がついて、我慢できずに声をかけちゃうんだ。

 しかも、声をかけるだけじゃなく、いきなりヒロインの手を取って、研究するかのようにじっと見つめだすんだよ。


 対人恐怖症なのにヒロインの手を取るとか、へんなの? ってゲームプレイ中は思ってたけど、魔法の研究に没頭するような人なら、興味あることにつっぱしってもおかしくないのかも。


 普通、いきなり手を取られたら不快感をあらわにすると思うんだけど、そこはヒロインなだけあって、にっこりといい笑顔を向けて言うんだ。


「初めまして、ワーズワース男爵家のレイラと申します。いかがなさいました?」


 ん? いい笑顔なのは合ってるけどセリフが若干違うような?


「いえ……光り輝くようなすてきな……手、ですね」

「ふふっ、ありがとうございます」


 いや、ゲームどおりのセリフだ。


 モーリス様は光属性持ちなんだってことをほのめかすんだけど、ヒロインには伝わらないんだよね。

 っていうか、ヒロインの名前、レイラって言うんだ。

 わぁ~こっそり、レイラちゃんって呼んじゃおうっと。

 ゲームだと名前を自由に決められたから、この世界ではどういう名前かわからなかったんだよ。


 モーリス様は光属性持ちってことで興味を持つんだけど、毎日接していくうちにレイラちゃん本人にも興味を持ち始めるんだ。


 二枚目の課金スチル【モーリス様との出会い】もばっちり見れた。

 こっそりと喜んでいたんだけど、よく見れば、レイラちゃんとモーリス様の会話ってまだ続いてるみたい。

 このへんはゲームとの違いかな。


「あの、お名前お伺いしてもよろしいでしょうか?」

「あ、ぼくは……ヤーノルド子爵家のモーリスです。あの、その……ああ! 手を取ったまま……あああああ……」


 モーリス様は慌てて掴んでいた手を引っ込めて、おどおどした態度になった。


 ああ! モーリス様って、今の今までレイラちゃんの手を握ったまんまだったんだ!

 それをやんわりと気づかせるために、名前を聞いたってことかな。


 田舎育ちの男爵令嬢だけど、ヒロイン補正があるのか……さすがだな、レイラちゃん!


「いかがなさいました?」

「きゅ、急に手を取って、すみませんでした!」


 モーリス様はその場で立ち上がって腰を直角に曲げる勢いで頭を下げた。

 頭を下げた拍子にちらっと前髪で隠れているアクアマリン色の瞳と顔が見える。


 うん、眼福。


「頭をあげてくださいませ」

「ゆ……許していただけるまでは……ごのまま……」

「……許しますから、どうか頭をあげてくださいませ」


 レイラちゃんの声が震えているような気がする。

 もしかして……モーリス様の突飛な行動が怖くなっちゃったのかも。


 私とクラスメイトたちが見守る中、モーリス様は頭を上げながら袖で目元をぬぐった。

 またしてもちらっとお顔が見えたんだけど、なんだか怯えてない?

 袖を見れば、涙を拭いたような模様が……え? まさか泣いてるとか? いや、まさか~……。


「ありがどうございまず~……」


 うわ、泣いてるわ。


 ……ゲーム中では見られなかったモーリス様の一面を知って、正直がっかりした。

 超絶イケメンだけど、こんな程度で十五歳の男が泣いちゃうとかないわー。



 入学式のその日、私は教室でのオリエンテーションが終わると真っ直ぐに家に帰った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ