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16.ブライアン様とスイートポテト

 部屋に戻ると黒猫姿のクロスがイスに座って待っていた。


「おまたせ。今日はスイートポテトと芋ようかんだよ」


 両方をテーブルに置き、芋ようかんを切り分けて皿に載せた。

 すると、クロスが首を傾げた。


「なぜ二種類あるんだ?」


 言われてみれば、今まで一度も手作りのお菓子を二種類同時に出したことはない。


「ん~スイートポテトはお店で売るために作ったの。こっちの芋ようかんは私が食べたかっただけ」


 私はそういうとすぐに芋ようかんを口に入れた。

 そう、この味だよ! このサツマイモだけで作った感じが好きなんだよね。


 クロスはしばらくの間、考え込むような仕草をしていた。


「俺以外にもアーシュの菓子を食べているやつがいるというのか……」

「家族も食べてるよ?」

「アーシュの家族と俺以外で、だ」

「お母さんが商品化のテストとお小遣い稼ぎのためにお店に出せってさ。商人の娘としてそこは、従うべきところでしょ?」


 私がそういうとクロスは不服そうな態度をしつつも、コクリと頷いた。


 しばらくは拗ねるかもしれないな……なんて思いつつ、二切れ目の芋ようかんを口にすると、クロスはハッとした表情になり、慌ててスイートポテトにかじりついた。

 そんなに慌てなくても、スイートポテトは取らないんだけどな。

 芋ようかん? それは奪い合いかな!


***


 翌日、お父さんのお店を手伝いながら、スイートポテトを売っていたんだけど、なぜか、お店に黒猫姿のクロスがいる。

 しかも、私のすぐ横……一体どうしたっていうんだ!?


 理由を聞いても教えてくれないので、気にせずに店番をしている。

 私がちょっと常連のおじさんと流行りのお菓子について話している間にスイートポテトは売り切れていた。

 レイラちゃんは見かけなかったけど、きっと買えた……よね?


 そんな心配をしつつも、さらに翌日、いつもよりも早めに学院へ行き、裏庭の茂みへと隠れて待っていた。

 裏庭の一角で騎士団長の令息であるブライアン様が訓練しているのが見えた。

 しばらくすると、ピンクブロンド色の髪が目の前を通りすぎていく。


「お疲れ様です」


 レイラちゃんがブライアン様に近づきながら、にこりと微笑んだ。

 ブライアン様は片手を上げて、嬉しそうな表情をしつつもタオルで汗を拭いている。


「手作りしてきたんです」


 レイラちゃんは私が可愛く包んだ包みをブライアン様へと手渡していた。

 ブライアン様はその包みをゆっくりと開け、中身を確認すると見惚れるようないい笑顔を浮かべた。


「ありがとう。ここで食べてもいいだろうか?」


 ブライアン様の問いに、レイラちゃんは何も言わずに微笑みながら頷く。

 ゆっくりと包みからスイートポテトと取り出すと、ブライアン様は満面の笑みを浮かべながら頬張った。


 はい、ここがエンディング前のブライアン様の最終スチル。満面の笑み、いただきました!


 ここに至るまでにブライアン様から代々騎士となる家系の嫡男で、自分は本当に騎士に……父のような騎士団長になれるのだろうか? といった感じの悩みを聞かされるんだ。

 心折れそうになると、ヒロインが現れて慰めてくれたり、カツを入れてくれたりする。

 そうしてだんだん惹かれていき、心の支えとなってくれるヒロインを今度は自分が支えたいと思うんだ。


 ブライアン様はブラコン気味の妹がいるだけで、女性とは接点のない人生だったから、惹かれていっちゃうのは仕方ない。


 仕方ないんだけど、レイラちゃんが進めているのは逆ハーレムルートだからね……。

 今後どういった態度で接するのかとても気になる。


 次はユリシーズ先生のお菓子を作らなきゃだな。


 私は二人がいなくなったのを確認するとそっと茂みから出て、教室へと移動した。

 その時に、黒猫を見たような気がしたんだけど、気のせいだったかな。

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