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15.スイートポテトと芋ようかん

 目が覚めると黒猫のクロスが隣で眠っていた。


「さっきのはきっと夢だね」


 私はそうつぶやくと、クロスの首についている銀色のリボンにそっと手を伸ばした。


「夢ではない。これを解いても、婚約者であることは変わらないぞ」


 クロスは両手で私の手をぎゅっと掴むと、そのまま指先を舐め始めた。


 なぜ、解こうとしているのがバレたんだ!

 それよりも、ざりざりとした舌で舐めるのはやめてほしい。


「アーシュの指はまるで菓子のように甘いな」


 あいかわらずクロスは私の指先を舐めている。


 待って!?

 あれが夢じゃないっていうなら、今は黒猫の姿をしているけど、本当は魔王の令息でイケメンな成人男性なんだよね?

 そんな人が私の指を舐めてる……!?


「ちょ、やめいっ!」


 私は変な声を出しつつも、慌てて手を引き抜いた。


「この程度で驚いていては身が持たんぞ?」


 クロスは黒猫の姿のままクククと笑っていた。


***


 それから私はクロスに翻弄されつつも、せっせとレイラちゃんのためにお菓子を作った。

 ごめんなさい、嘘です。

 課金スチルを見たいがために作りました!


 どうやらレイラちゃんは、最短で逆ハーレムルートを進めているようだ。

 このままいくと、一学期の終わりにゲームでいうところのエンディングを迎えることになりそう。


 ということは、そろそろエンディング直前に起こるイベントに向けて、お菓子を売り出さなければならない。


 まずは騎士団長の令息であるブライアン様の分から用意しよう。

 ブライアン様の大好物なお菓子はスイートポテト。

 私は芋ようかんのほうが好きなんだよね。


 スイートポテトの材料で芋ようかんも作れるから、両方作っちゃおう!


 私は試作用のキッチンへ向かい、材料を集め始めた。


・サツマイモ

・砂糖

・バター

・塩

・牛乳

・卵黄


 まずは皮をむいたサツマイモを蒸して、竹串が通るくらい柔らかくする。それをマッシャーでつぶす。

 ここで、つぶしたサツマイモをスイートポテト用と芋ようかん用に分けてる。

 スイートポテト用は温かいうちにバターと砂糖と塩を入れてよく混ぜる。そこに少しずつ牛乳を足していってなめらかにして、形を作って天板に並べる。つやを出すために卵黄を塗ったら、焼き色がつく程度に焼く。


 焼いている間に、芋ようかん用のつぶしたサツマイモに砂糖と塩を入れてよく混ぜる。

 少しだまがあるほうが好みなので、このまま四角い器に空気を入れないようにみっちり入れて平らにする。


「いい香りね~」


 ちょうどオーブンからスイートポテトを取り出したところに、お母さんがやってきた。


 お母さんの笑顔を見れば、言われなくともわかる。

 試食させろってことだよね!


 私は出来立てを皿に乗せて、そっとお母さんに差し出した。


「このつやっとした感じと形がいいわね」


 フォークで一口サイズに切り分けて口に運ぶと、目を見開いて驚いた顔になった。


「う~ん! ほどよい甘さとしっとりした食感が美味しいわね!」

「あとでレシピを持っていくよ」

「あら、顔に出ていたかしら? よろしく~」


 お母さんはそのまま、スイートポテトの乗ったお皿を持って、お店のほうへと向かった。

 きっと、お父さんにも一口食べてもらって、商品化を後押しするのだろう。


 お菓子ばかり売り出しているから、そのうちお菓子屋さんを始めるんじゃないかな?


 そういえば、お母さんは芋ようかんには気づかなかったね。

 四角い器にみっちり詰めてあるだけだから、材料にしか見えなかったのかも。


 ということは、これは売り出さずに食べてもバレないってことだね!


 私はいそいそとスイートポテトをひとつひとつ可愛く包んだ。


 そして、試食用のスイートポテト一つとみっちり詰まった芋ようかんを持って部屋へと戻った。


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