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10.学院教師【ユリシーズ先生との出会い】

 今日は自分の基本属性を把握しようっていう授業の日。


 魔法には様々な種類があって、生活を豊かにする生活魔法、攻撃を主とした攻撃魔法、ケガを治したりする回復魔法、他に補助魔法や召喚魔法などいろいろなものがある。

 魔力を持つ人はこれらの魔法のうち、自分の属性と相性のいいもの、訓練を積んだものを扱うことができる。


 属性は、基本属性『火・水・風・土・雷・光・闇』と特殊属性『時・空・幻』の合わせて十種類ある。

 魔力を持つ人は必ず一つ以上の基本属性を持っていて、珍しい人になると基本属性を複数とか、基本属性と特殊属性の両方持ちになる感じ。


 というのが大まかな感じかな。


 今日の授業では、攻撃魔法を使って属性を判別するんだ。

 ここで問題になってくるのが……光属性って攻撃魔法がないんだよね。

 だから、ヒロインのレイラちゃんは自分が光属性持ちだって判断が出来なくて困る……というのがゲームでの設定。


 消去法で光属性持ちだってわかるんじゃないの? ってゲームプレイ中は思ってたんだけど、現実になったことでよくわかった。


 レイラちゃんは光属性だけじゃなく、闇以外の五つの属性をある程度扱えるみたい。

 そりゃ、光属性が得意属性だっていう判断つかないわ……。


 授業で、王太子のデリック殿下は風属性、その婚約者のウェンディ嬢は火属性、魔法学者の令息のモーリス様は水属性と雷属性持ちだってことが判明した。

 いや、ゲームの設定どおりなんだけどね!


 あ、私は光以外の五つの属性もある程度扱えるけど、闇属性持ちだったよ。



 授業が終わると、レイラちゃんはいそいそと廊下へ出て行った。


 実はこの授業のあと、課金スチルが発生するのだ!

 その相手は、さっきまでの授業で教鞭をとっていたユリシーズ・レヴァイン先生。

 真っ直ぐストレートな深い緑色の髪に翡翠色の瞳、余裕のある大人といった感じの風貌のイケメンだ。

 年齢は二十五歳。私たちとは十歳違いだね。

 表の顔は何でも相談に乗ってくれる大人な男性なんだけど、裏の顔はオレ様な感じなんだよ。

 ギャップ萌えってところかな。


「ユリシーズ先生」


 何食わぬ顔をして私も廊下に出たら、レイラちゃんがユリシーズ先生に声を掛けているところだった。


「君はレイラさんだったね。どうしたんだい?」


 ユリシーズ先生は穏やかな笑みを浮かべて、小さく頭を傾けた。


「あの、今日の授業でわからないことがあって……」

「君の属性のことかな」

「そうなんです……」

「君は普段、どんなことをしているんだい?」


 レイラちゃんは恥ずかしそうに口元に手を当てながら言った。


「あの……令嬢らしくないんですけど、お菓子作りをよくしています」

「へえ? 例えばどんなもの?」


 ユリシーズ先生は興味を引いたようで、一瞬だけ目をギラッとさせてた。

 猛獣のような目線って、こっちまでドキドキしちゃうよ。


 レイラちゃんはポケットからお菓子の入った包み……今回の場合はキャラメルを取り出した。

 ん? あの包み……。


 じっとレイラちゃんとユリシーズ先生の様子を見ていたら、ぽんっと肩を叩かれた。


「この感じはスージー!」


 振り向きながらそういうと、呆れ顔をしたスージーが立っていた。


「こんなところで何やってるの」

「あ~……レイラちゃんかわいいなって?」


 私は小声でそう言うと、スージーの視線がレイラちゃんへ向いた。


「ピンク頭……か~。たしかに外見はかわいいけどね」

「でしょ~!」


 私とスージーが小声でそんな会話をしている一方で、レイラちゃんとユリシーズ先生の会話も続く。


「キャラメルというお菓子で、やわらかい飴みたいなものです」

「へえ? 君の手作りなんだ。一つもらってもいいかな?」

「はい、どうぞ」


 ユリシーズ先生はレイラちゃんのてのひらから、キャラメルを一つつまんで、包みを解いた。

 カラフルな包みは、見覚えのあるものでつい首をひねった。


「ねえ、あれってアーシュラちゃんが作ったやつだよね?」

「やっぱり、そう見える?」

「そりゃ作るところから試食、包装までずっと見てたからわかるよ。っていうかさ……」


 やっぱり、あれって私が作ったキャラメルだよね。

 そういえば、昨日もレイラちゃんがお店にきてたから、買っていったのかな。


「やっぱり、ピンク頭はヤバイわ。アーシュラちゃんが作ったものを自作のお菓子だって言っちゃうとか……この間の青春男の件だってあるし……うわ~怖いわ~!」


 ああこの感じ知ってる。前世で見たよ。

 既製品の手編み風セーターのタグ外して、「私が作ったの!」って手渡してる女とそれを信じて喜ぶ男……っていう内容のドラマあったよ!


 そう考えると、レイラちゃんはヤバイ。すごく腹黒に見えるね。


「これは……すごく美味しいね。なんだか懐かしい気分になる。よければ、もう一つ分けてもらえないかな?」


 ユリシーズ先生の声が弾んだものに変わった。


「一つと言わずにたくさんどうぞ」


 レイラちゃんは両手にいくつもキャラメルを乗せて、とてもいい笑顔を浮かべる。

 それをユリシーズ先生が嬉しそうにしながら、つまむ。


 これが、学院教師【ユリシーズ先生との出会い】……課金スチルのシーンだ。

 

 普段だったら、課金スチルが見れてよかった! って喜ぶんだけど、今回は複雑な気分のまま、二人のやりとりをじっと見つめた。


ブクマ・評価ありがとうございます!

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