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7. えげつなさに納得した。

 


 そういや、じいさんの家の門前に何か木の看板みたいなものがかけられて、流麗な字で何か書かれていた気も……あれ、もしかして組名だったのかな……ハハ……


 じいさんと遊ぶ俺を見て、母さんたちが顔を引きつらせていたことまで思い出してしまった。

 そりゃ、じいさんがえげつないのも当然だ。ヤクザの親分だもんな……


 チラッと目の前にいる黒スーツ集団を見る。

 ニヤリとタチ悪げに嗤う強面たち。


「借り」とやらは思い出した。

 思い出したけど……


 そもそもあのとき割った壺、じいさんの家の持ち物だろ?

 じいさんが捕まったって、別に何か怖い目にあわされるわけでもないんじゃね?

 それをあんな恩着せがましく言うなんて……今思い返しても、なかなかに最低なジジイだな……


 てか、そもそも――


 ――そんな幼稚園生のころの話を、今さらもちだされても!!!!


「――いやぁ、ごめんなさい。全然全く記憶にないです。人間違いじゃないですか?」


 うん、ここは惚けるのが吉。

 ここで思い出したことを伝えたら、間違いなく泥沼一直線。

 ヤクザの皆々様と関わることになってしまう。


 てか、あのえげつないじいさんが経営する喫茶店なんて、絶対にろくなもんじゃねえし。

 そもそも俺、サラリーマンでそんなことしている暇ねえし。


 なによりも、こんな恐ろしげな状況に自ら身を投じる必要などあるまい。


 第一、記憶の問題なんて、所詮水掛け論だ。

 言った言わないを論じたって、証拠なんてどこにもない。


 そう思った俺の思惑は、次の瞬間、ぶちやぶられた。


 男がおもむろに床に突きたてられていたドスを引き抜く。

 そして、何かをサッと取り出すと、再びドンッ! と床にドスを突き刺した。


「ヒィィィ!!!」


 お、おれの膝すれすれなんですけど!!!!

 5ミリずれてたら、完全に俺の肉を引き裂くんですけど!!!!


 しかも、床には深い深い傷。


 命の危険を感じるうえに、床の修理代までぶんどられそうだ……

 なんだか切なくなってきた。


「ご覧ください」


 遠い目をする俺に、超凶悪面のお兄さんがドスによって縫い留められた一枚の紙を顎で示す。


 ――見たくねえな……絶対的に碌なもんじゃないだろ、これ。


 そう思いつつチラッと目の前の男を見ると――ウン、見ないで許してくれる気配ゼロだね!


 泣く泣くドスに縫い留められた一枚の紙を見る。


 うん? かなり汚い字だな。

 まるで子供が書いたみたいだ。


「えーっと……」


 ドスのぎらりとした光にガクブルしつつ、なんとかその文字を目で追う。


『僕、ささもとじゅんたは、今後、北村泰三氏の頼みごとをされた際には、全身全霊をもってそれにこたえることを誓います。なお、それに反した際には、一族郎党皆殺しにされても文句は言いません』


 そして直筆サインと血判。


 ――重いわ!!!!




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