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6. 思い出さないほうが幸せだった、多分。

 


 何があっても見捨てることを決意しつつ、流麗な筆文字に目を落とす。


  『おぬし、わしに借りがあったな? その借りを今返してくれ。――わしの作った喫茶店を継いでほしい』



「…………は?」


 素でポカンとした。


 意味がわからん。


 あのじいさん、喫茶店の店主だったの? あの根性の悪さで? どれだけ殺伐した喫茶店なんだ。

 しかもなんでこんな極悪なツラした皆さんがこんな手紙を持ってくるんだ!?


 いや、そもそも……「借り」ってなんだっけ?


 眉を寄せて、チラッと目の前を見ると、凶悪犯もかくや、という強面のおっちゃんがじっとこちらを凝視している。


「お忘れですか。おとこと漢の約束を」


 え……、「借り」ってそんな御大層なものなの? マジで!?


 というか、この人たち、俺とじいさんに何があったのかを知ってるんだな……

 ホント、何者なんだろう、じいさんもこの人たちも。


「あのぉ……つかぬことをお伺いしますが」


 おそるおそる口を開く。


「この手紙を書かれた……北村サン? って方と、皆さまとのご関係は……?」


 身の安全を図るために、まずは彼らとじいさんの関係を聞いておこう。

 とりあえず、「北村氏」が何者かは思い出していませんよ、という風情で。いや、ここで関係を認めてしまうと、何かあった時にバックレづらいし。


 目の前に座っていた超凶悪面のおっさんが、ニタリと笑った。


「――北村泰三氏は、N市を中心に大きな勢力をふるった北村組の先代組長で、我々はその組員です」


「…………はい?」


 思わず間抜けな声で聞き返す。


 え、今、なんつった? あのじいさんが、組長?

 ……まさかね……ハハ。

 やべえな、仕事しすぎて幻聴が聞こえてきた。

 やっぱビール飲んで、寝るしかねえな。


 現実逃避的に手にした缶ビールを口に近づけた瞬間――


 ――ダンッ!


「ヒィィィ!!!」


 め、目の前に、なぜかドスが突き立てられたんですけど!!!!!!


 え、俺殺されるの!? このドスで殺されるの!!?


「早く思い出してもらえませんかねぇ、坊。先代との約束」


「はい!! いますぐに!!!!」


 死に物狂いで、記憶を掘り返しまくった。


 ぐぬぬ……早く思い出せ、俺!

 さもなくば、このドスで頭の中を引っ掻き回される可能性大だ!


『いいな、坊。この貸しはいつか返してもらうからな』

『うん!』


 あ、確かに何か約束したかも……?


『うわっ、捕まる!』

『坊、逃げろ!』

『じいちゃん!!』

『いいから、いけ!!』

『……っ! ごめん、じいちゃん!』


 あー!! 思い出した!

 確か、じいちゃんと遊んでて、じいちゃんの家に飾ってあったメチャクチャ高そうな壺を割ったんだ。

 で、マズイから逃げようとしたら、まんまと見つかってしまい……じいちゃんを残して、俺逃げたんだった。


『いいな、坊。この貸しはいつか返してもらうからな』

『うん! 俺、絶対にもう、仲間を見捨てないから!』


 あった、あったわ。そんなこと。


 そう思った瞬間、冷や汗がタラリと流れる。


 てか、この人たちの言うことを信じるのなら、あの家って……もしかして、ヤクザの本邸ってやつだったのか……?

 で、俺が遊んでいたじいさんが、組長……

 ま、マジで……?




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