始まりの話
「母ちゃん・・・魔王って、魔王?」
俺の意味不明の質問も、母ちゃんと呼んだことも無視して、母ちゃんが頷く。
父ちゃんが立ち上がり、奥の部屋から一冊の本を取ってきた。
『エルヴァドゥール探検記』
いわゆる異世界物のファンタジー小説だ。
「これって・・・」
小さいころ何度も読んだ、剣と魔法の世界のお話。
妖精やドワーフが人間と共存し、穏やかに生活を送っている。
そんな世界を主人公の女傭兵が旅をするだけの話なのだが、いろいろな地で、いろいろな種族の問題に巻き込まれていく。
改めて、手に取ると、懐かしい思い出がよみがえる。
作者は・・・《白瀬嵐》・・・ほかにあんまり作品を見たことがないな・・・。
「懐かしい本だけど、これがどうかしたのか?」
「書いたのは、ラン子さんだよ。」
はぁ?
今日何度目かの間抜けな声が出た。
「それでね、実は・・・「実話なんだよ」」
決して駄洒落ではないんだろう。
両親の声が変なはもりかたをし、俺は今日一番の素っ頓狂な声を上げていた。
はぁ??!!
いや、この状態で、茶を飲み続けている妹が一番びっくりだけどな。
「母ちゃん、異世界の人だったのか?」
「あんたバカなの?」
うぉう。息子に向かって鋭い切り替えし。
そして母ちゃんと呼んだことはスルーしてくれているらしい。
手元のグラスは汗をかき、手が滑りそうになる。
「ラン子さんは、言葉が足りないからねぇ」
おっとりと言う親父よ。
頼む。あんたが説明してくれ。
「そういわれても、これはラン子さんとてっちゃんの話だしねぇ。」
え??
俺も絡んでるの?