探し物の正体は
油断するからだ。とこぼす母の声が聞こえるが、油断も何も、こちとら初対面よ?
未知との遭遇よ?
初めての生き物(?)相手にどう警戒しろと?
ひとしきりパニックになる俺。
忌々し気に睨む母。
興味深げに眺める父。
我関せずと麦茶をすする妹。
うん。妹よ覚えておけ。
指先をチューチューと吸われている感触がある。
献血のような虚脱感。これって血を吸われているのか?
やだ、なんだか気持ちいい・・・って落ち着けおれ!
黄色かったタマコ(仮)が徐々にオレンジがかった色になり、頭にツンとした角ができた。
あ、これ某RPGでおなじみのスライムじゃん。
テレレレッテレ~タマコ(仮)はスラ〇ム〇スにレベルアップした。
っていいのか俺。
ぷはぁと、口を離したタマコ(仮)は母の視線から逃れるように俺の手の上を転がっていく。
なんかかわいいなこれ。
あっ目が合った。
<ジロジロ見てんじゃねーよ。このチェリー>
前言撤回。
ふいに頭の中に聞こえてきた声もびっくりだが、何こいつ。
かわいくねぇ。
さらっと人の29年間の大切な秘密を暴露してんじゃねぇよ。
今すぐかき混ぜて、どろっどろにしてとろろに混ぜてやる。
それとも、衣をつけてフライにでもしてやろうか。
こちらの考えがわかったのか、慌てたような声が脳に響く。
<ま!まて!私は魔王だぞ!!>
「はぁ?!?!」
あっ、声に出てたわ。