探し物は本当に何なのでしょうか
ラップの真ん中が内側から突き破られたビンの中には、かすかに生き物の痕跡があるだけだった。
慌てて、食卓回りを探す。
リュックの中にはなかったから、この家のどこかにいるはずだ。
すっかり物置になってた自分の部屋や、トイレ、玄関と見返すが、どこにも落ちていない。
くっそぉ。どこ行きやがった。
探し物は何ですか~
座布団をひっくり返して探す俺の耳に、調子っぱずれの歌が聞こえてくる。
探し物の正体?何なのかわかりません!わかってたら苦労しません!
見つけにくいものですか~
見つけにくいんだよ。本当に!くっそぉ本当にどこ行きやがった。
イライラと焦りが最高潮になったとき、それは現れた。
手に黄緑色の震える球体をつまんだ、最凶の母ラン子さんが。
「哲真。探してるのはこれかなぁ?」
少しも笑っていない目で、口元に笑みを張り付けて、床に這いつくばる俺を見下ろす母の頭に、角が見えた気がするのは、気のせいに違いない。持ってた座布団を頭に乗せながら小さくハイと答えた。
きれいに片付いた食卓を囲むように座る4人。
手元には冷たい麦茶。
真ん中にはビンに戻された、黄色い丸。
親父は興味津々といった顔で、ビンをのぞき込み、お袋は対照的にげんなりした顔でビンをにらみつけていた。
俺と妹は、ただただそのさまを眺めるだけ。
「これが、ウズラの卵から出てきたのかい?」
親父は目をキラキラさせながら、聞いてくる。
身を乗り出すなよ。危ないから。
理科の教師だからなのか、もって生まれた性質なのか、食いつきっぷりが半端ない。
「うん。昨日の朝飯に食べようとしたら、こいつが出てきた。」
なんだかわかるか?と尋ねると、
親父は楽しそうに笑みを浮かべ、お袋を指さし、自分はへーとかほーとか言いながらビンを眺めている。
「え?かあちゃ・・じゃなくてラン子さん。心当たりあるの?」
心底いやそうにため息をついた後、母ちゃんがビンに手を伸ばし、目の高さに持ち上げた。
あーという親父の残念そうな声は完全に無視。
「こいつ・・・まだ生きてやがったの?」
はい?
「え・・・知り合い?」
妹もびっくりして、お袋のほうを見る。
タマコ(仮)は、お袋から逃げるようにビンの隅に縮こまって、黄緑色になって震えている。
どうやらおびえているらしい。
「これ、何なのか、知ってるの?」
「本人に聞けばいい」
「へっ?」
間抜けな声を上げる俺の手をガっとつかむと、ビンを傾ける。
つるんっという音が聞こえそうな勢いで俺の手の上に落ちてきた、タマコ(仮)。
とりあえず、顔色(?)はまだ緑がかっているものの、震えは落ち着いてきているようだ。
「こいつ、しゃべれるの?」
空いてる手でつつこうとしたら―――かじられた。
あぁ~?!!!