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俺とタマゴと・・・  作者: 閑古鳥
3/7

俺の家族

「・・・母ちゃん?」

笑顔を崩さないまま、一歩踏み出す女性。押されるように一歩下がろうとするも、自転車を持っているせいでうまく下がれない。

「・・・母ちゃんって言ったのかな?」

なんだろう。

笑顔を向けられてるのに、気温のせいだけではない汗が背中を流れていく。

気のせいか、斜めにかけたバッグの中のタマコ(今朝命名)も心なしか震えている気がする。

「てっちゃん?」

笑顔のまま襟もとに延ばされる手が怖い。

母の背後に雷雲が見える気がする。

「ら・・・・らら・・・・ラン子さん!!」

絞り出すように名前を呼ぶと、ようやく消えた威圧感にホッとする。

「おかえり~」

ただいまですよ。

がっくりとうなだれた俺は、母の運転する軽トラの荷台に乗せられて運ばれて行った。

BGMはドナドナです。

これいろいろと違反してないか?


実家についたのは、ちょうど昼飯時だった。

ただいま~と土間から上がる母、もといラン子さんについていく。

台所からはお帰りの声。

今日の昼飯は父ちゃん作らしい。

これなら期待できる。ぶっちゃけ母の料理は食えたもんじゃない。

「今ホッとしたでしょ。」

ラン子さんが振り向きざまにジト目でにらんできた。

なんのことでせうか?

とぼけて視線を逸らすが、無駄らしい。

この母は、なぜか無駄にカンがいい。

今日だって、大まかな時間しか言っていなかったのに、駅ではなく、徒歩ルートの坂道で待ち伏せとかどれだけカンが良く、かつ暇なんだと思ってしまう。

昔からそうだった。

ベッドの下に隠した青春の思い出・右手の友はきれいに揃えられリボンまでかけられて、机の上に置かれていた。

好きな子の写真は、いつの間にか額に入れられて机の上に飾られていた。

出せずに隠したラブレターは赤ペン先生よろしく添削され、もらった分はスクラップブックに貼られて、やはり机の上に置かれていた。もっともページが増えることはなかったが。

さすがに頭にきて、部屋に勝手にカギを付けたのは高校生になったとき。

しっかりロックしたはずの扉が、母のノックというにはあまりに凶悪な一撃で吹き飛んだのは、今ではいい思い出だ。

思えばあれからだな。母・・・ラン子さん逆らうのをあきらめたのは。

遠い目をしていると、台所から父が現れた。

50を過ぎた父は白髪の入り始めた長い髪を後ろで一本に束ね、両手で大きなお盆を持ち優しい笑顔で迎えてくれる。

なぜ、この父と、この母が一緒になったのかは、かなり大きな疑問だが、相変わらず夫婦仲は円満らしい。

頼むから、久しぶりに帰った息子の前でお帰りのチューとかやめてくれ。

せいぜい1、2時間だろうが。

40代と50代。悪いとは言わない。夫婦仲良しは実にめでたい。めでたいのだが、もうすぐ魔法使い突入の俺としては、まぶしすぎるんだよ!


「あぁあぁ。またかぁ~」

後ろから聞こえる、あきれた声。

振り返ると、3つ下の妹が腕を組んで立っていた。

「お帰り、てっちゃん。」

「ただいま」

諦めに満ちた目で見上げてくる妹よ・・・


うむ。

我が妹ながらかわいく育った。

もうじき26だというのに、せいぜいJKにしか見えない妹の形のいいつむじを見下ろしていると、

「てっちゃん?何考えてる?」

大地を揺るがすハスキーボイス


うぉう!母とよく似た外見にたがわず、見事に引き継がれた勘の良さ。

この妹に、「幼い」だの「ちび」だの言って無事だったやつがいただろうか。

いやいない。

久しぶりの家族は相変わらずだった。


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