ー第8幕ー
御前会議後、キシリナの部屋にてキシリナよりイザベルとアヴェーヌは呼び出されていた。
「全く勇気があるヤツだよ、オマエは。女神様もコヤツと居て心身に堪えるのでないか?」
「はっはっは! こやつのことで悩んだことは今まで一度もないぞ。キシリナ殿」
「心身に堪えるのは私の方でございますわ……それはさておいて、キシリナ様、ここに呼ばれたのは何の用件でありまして?」
「ああ、皇室内にて変な噂話を耳にしてなぁ」
「変な噂話」
「我が皇室がバグラーンと既に協定を内密に結んでおるというのだ」
「!?」
「ふふ、一体誰だと思う? 決まっている。戦場に出向かない輩達がそうだ」
「まさか……ギレヌ王子……国王様が……!?」
「アタシの推測だよ。そんな話、誰かの妄想でしかないのかもしれないけど、本当なら戦場に赴くアタシらは全員犬死さ。だけどここにきて面白い話がきた」
キシリナはアヴェーヌをじっと見つめた。
「もしも今までの常識を覆すことがあったとして、それを叶えられる者が目前にいるのなら、アタシは一生涯崇め奉るだろうな」
「ふふっ、其方は妾に、いや、妾達に何を申したいのだ?」
「この1か月間、この国から離れて内密に戦闘準備を備えろ。必要なものは全て揃えて渡す。皇室の誰にも見えないところでやるのだ。イザベル、お前達の秘密行動は全てアタシが闇に隠してやるよ。ひとまずは2百万の軍勢、2百万の兵器を約束する。奇跡という奇跡を一緒に起こしてやろうじゃないか。アタシはお前に、お前たちにその可能性を託したいのだ」
「慈悲深い配慮、心から感謝致しますわ。必ずやデュオンに栄光の勝利を!」
「おう、面白くなってきたな。やってやろうではないか! はっはっは!!」
キシリナとの密談後、イザベル一行はデュオン城城下町のひっそりとした酒屋でこれからの話を交わした。2人はボロ服に身を包み、素顔を隠してもいた。
「地形がわかればいい?」
「ああ、そうだ。自然の力を以てすればバラグーンが率いるであろう6千万の軍など糸も容易く殺してしまえるわ。ぐびぐび」
「寓話すぎますわ。それに貴女、先ほどから飲み過ぎですわよ! 酔った勢いで調子にのっているのでなくて!?」
「バーカ、妾の力を其方が何も知らないだけのことじゃあ、ボケ。ひっく」
「まぁ、御言葉が乱暴であることは女神様ゆえ、目を瞑ったとして、アルハ高原近域の資料であるなら、いくらでもお教えできますわよ?」
「うぉーし! それでいい! 店主殿、もう一杯!」
「あいよー」
ボロ服を脱いでしまえば、アヴェーヌの光り輝く体が露出してしまい大騒ぎになってしまうだろう。しかしボロ服に身を包んでいるからこそ、彼女が神などという存在でなく、どこか一庶民にすら感じてしまうイザベルがそこに居た――