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嗚呼!!なんて素敵な女神様!!  作者: いでっち51号
第1章~Goddess call~
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ー第7幕ー

 御前会議は大王会議室にて行われた。参席者はデュオン家長男ギレヌ・デュオン、長女キシリナ・デュオン、次女婿ドグマ・デュオン、次男アルマ・デュオン、副国家参謀のラッセル・ハローズ、そして国家参謀のイザベルにアヴェーヌ。追記するとドグマはデュオン軍総帥であり、アルマは大将にあたる。



「さて、皆の者、またアヴェーヌ殿、父上より話は伺っていると思うが、今から御前会議たる話し合いを行う。さっそくだがイザベルよ、今後のお前の見通しを述べてくれ」

「え? いきなり私にございますか?」

「当たり前だ。我々はそのアヴェーヌという者の正体がわからぬ。大筋の話は知っていても、これからどう向き合って、何を為していけるのかが、わからんのだ」



 ギレヌの言葉に立腹したアヴェーヌは床につけていた足を机上にあげてつけ、険しい顔を見せつけながらも言い放った。



「誰が正体のわからぬ者じゃあ? あ? 妾は神だと名乗っておろう? もっとまともな態度というのがとれないのか!? 王子を名乗る者とか!!」

「い、いい加減になさいまし!!」



 アヴェーヌの横に座っていたイザベルは立ち上がり、女神の頬をぶった。そして言葉を続けた。



「私は貴女の契約者でございますわ! その私の目上にあたる方々への御無礼な態度と発言、契約破棄にも等しい行動にございます! あまりにも過ぎた行動をとると言うのなら、私はこの場で私の命をとり、あなたの存在を消してさしあげますわ!」

「ま、待て! 何をするというのだ! イザベル!」



 イザベルは拳銃を取りだし、自分のこめかみに銃口を当てた。その顔は興奮を晒しており、とても正気にみられるものでなかった。彼女と息が近いキシリナはそっと拳銃に触れ、彼女なりに諭してみせた。



「止しな。イザベル。お前がそんな事やって、その後アヴェーヌ殿がどうなってしまっても、世界の現状は変えられない。アヴェーヌ殿、失礼なことをアタシらがしたのなら、それは謝る。だけど前提としてアタシらは貴女と仲良くしていきたいのだ。いくらでも馳走ならだしてあげよう。だけど彼女にも話させてあげてくれ。アタシらも貴女様も何よりこの国も彼女の存在そのものが鍵なんだからよ」

「馳走をだしてくれるというのか?」

「ああ、勿論だ。神様にお供えしない信徒がどこにいるっていうのさ?」

「そ、それなら喜んで……」

「ぷっ……」



 アヴェーヌのお腹が鳴り、一同は爆笑した。気がつけばイザベルもすっかりと笑っていた。こんなにも可笑しくて大笑いしたのはいつぶりだろう。彼女は自然と銃を懐にしまった。そしてやっと話を始めた。



「もう、女神なのにはしたないですわ。ですが、ご覧のようにアヴェーヌ様は御愛想の良い女神にございます。そしてご存知のように、荒廃した寺院を不思議な力を以て短期間に高級化した経緯もあります。人智を超えた存在と言えましょう。これは……アヴェーヌ様にもお願いしたい言葉にございますが、ここにいる皆様、そして国王にも提案をさせていただきたいことでもあります」



 一同の視線がイザベルに集まった。久しぶりに心臓の鼓動がこれまでになく高まっていく。彼女は体を震わしながらも、ハッキリとその革命の言葉を告げた。




「アヴェーヌ様と共にバグラーンへ宣戦布告を致しましょう!!」



 キシリナが拍手を鳴らした、ドグマとアルマがそれに続く。ラッセルはギレヌの顔色を伺い、拍手の輪には入らなかった。バグラーンのデュオン侵攻が世界で謳われている今、不思議な力に頼らず得ないのが定石な考え方だ。満場一致かと思われたその場でギレヌは平静を振る舞い、渋った顔でものを申した。



「ここまで得体の知れないものに賛同を得るとはな。戦争の開戦が避けられない今、私もその可能性に懸けることは同意しよう。しかし、全面戦争は避けさせて貰うぞ。我が軍が敗北確実となった場合、バグラーンへのデュオン加盟は公約とさせて頂く」

「おい兄者、何だ? そんな弱気な宣戦布告は?」

「弱気も何もあるか。これは私でなく国王からの通達であるぞ。ドグマ、お前はイザベルに賛同した、他の者もそうだ。もし敗戦となれば、その首すべてバグラーンに差し出すものと思え。その腹決め、できているのだと言うのだな?」



 ギレヌの問いかけに一同は俯き、口を閉ざした。一人を除いて。



「今さっきから黙って聞いておれば勝手なことを言いおって! バグラーンなど妾一人で殲滅させてしまえるぞ! そうなった時にギレヌ、其方は妾を神と崇め奉れるのか? ああ?」

「ふふ、随分とした自信じゃないか。イザベル、この戦争、この女神を自称する者を率いてお前が全責任を担ったらどうだ? 西域にはいるのだろう? お前の憎む家族とやらが」



 副参謀のラッセルが鼻につくような声でイザベルを挑発してきた。勘にくる言葉をかけられたイザベルはすぐに反論をしようと口を開いたが、アルマの方が早かった。



「兄さんたちは皆弱腰だなぁ~。こんなか弱い女参謀が神輿を担ぐぐらいなら、僕が最前線にたって指揮をとるよ。イザベル、君はドグマ元帥と共に僕に続け。それでどうだ? ラッセル、ギレヌ王子様」

「随分と自信があるのだな。ならばアタシも軍人となってイザベルを支援しよう」

「キシリナ様……」

「アタシはアンタに死なれちゃ困るよ。女神様も同じだろう?」

「妾は死んでしまうからな」

「ふん、ならば決定だ。宣戦布告受理の1か月後にアルハ高原にて開戦するぞ。各人戦闘準備へ迅速にとりかかれ」




 ギレヌのそっけない言葉によってバグラーンとの決戦は決定をした。この会議直後、キシリナの部屋にイザベルとアヴェーヌが呼び出された――



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