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嗚呼!!なんて素敵な女神様!!  作者: いでっち51号
最終章~Living alone in this world~
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ー第10幕ー

 キリアン邸、最上階のベランダ。そこにこの世の女神がいた。彼女はずっと、カドゥラ湖の揺らめきを眺めているようだ。鋭い銃声が聞こえてからも変わらずに。



「アヴェーヌ様」



 アヴェーヌの振り向いたその先、見覚えのある女性が立っていた。彼女は青ざめた顔で俯いていた。左手には拳銃が握られている。



「そうか。今の銃声、其方だったか」



 イザベルは俯いたまま頷いた。



「そうしょげるな。不味いワイン飲ませてくれたお蔭で目が覚めたぞ。妾は」



 イザベルは「すいません」と小さく呟いて頭を下げた。



「それで? これからどうするのじゃ? 新たな契約者よ」



 アヴェーヌは優しく尋ねた。イザベルはゆっくりと顔をあげた。サングラスの縁から涙が零れるように落ちていた。



「私を……私をどうか赦して下さい。鬼のように情けをかけられない私を。血も涙もないと謳われた私を。何もかもに無責任な私を。私はこの務めを果たすのに疲れたのであります。この無情な輪廻を私自身の手で断ち切らせていただきたいのです」



 イザベルは自分の顎に銃口を突きつけた。アヴェーヌは何も動じてない。



 アヴェーヌは優しい表情を変えないままだ。



「言ったはずじゃ。其方が契約者である以上、妾は其方の鏡であると。何をするのも自由。其方が自分の意志を持って妾を消すというのなら、歯向かうまい」



 それから少し考えた素振りをみせると、女神は言葉を続けた。



「お疲れ様じゃ。其方が休むのなら妾も一緒に休もう」



 1度止まった涙が再び溢れる。しかし彼女は自然と笑顔を作れたのだった。



「嗚呼、なんて……素敵な女神様なのでしょうか……」



 キリアン邸よりこの日最後となる銃声が聞こえた――



 イザベル・ラベルスは自ら命を絶った。後を追うようにして消えていく女神の当体。アヴェーヌは何も言わず、ただそっとイザベルの頬を撫でていた。その瞳からは涙が止めどなく流れていた。イザベルの背中にぴたりと溶け込むように寄り添い、やがて伝説の女神はその姿を完全に消したのだった――



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