ー第9幕ー
イザベルの襲撃時、キリアン邸の地下牢にアソーが現れた。そして牢屋の鍵を解錠した。牢の中にいたのはドロシー・ハサウェイだった。
「どういうことですか?」
「神の主によるお達しになります。あなたを自由にしてあげるようにと」
「キリアン様が?」
「まさか。キリアン様はお亡くなりになります。主も後を追うと言われました」
「あの、言っている意味が私には……」
「どこにでも行けばいいのです。貴女が行きたい場所に。もうここには誰もいません。貴女を雇う人間も神様も」
「………………」
「さぁ、早く出なさい」
ドロシーは恐る恐る牢の外へ出る。
「ありがとうございます。アソー様、一つ尋ねさせてください」
「何ですか?」
「私はこれからどう生きていけばいいのですか? 魔女狩りが世界中で行われている今、魔女であることは隠していかねばなりません。私は……」
アソーは少し考えてから答えた。
「その手の訳のわからない質問に答えるのは1つ。生きていく上に大事なことは、朝は希望を持って目覚め、昼は懸命に働き、夜は感謝と共に眠る。その気持ちを持つことです。頑張ってください」
「はぁ……」
ドロシーは去っていった。アソーは手を広げて見てみた。少しずつ、自分の体から粒子が発せられて自分が消失していく。主は自ら責任をとり、全てに終止符をうたれたのだ。牢の天井を見上げた彼女は目を閉じて瞑想に耽った。あの言葉こそが自分の最後の言葉だ。もう長くはないだろう――




