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嗚呼!!なんて素敵な女神様!!  作者: いでっち51号
最終章~Living alone in this world~
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ー第7幕ー

 アルカリ市の街外れ。誰も使わない廃墟となった山小屋にて、テッシモとアルテッシモの二人が来ていた。名目はキリアン女王陛下の使いがくる手筈で。



 二人は玄関からアソーが入ってくると深々とお辞儀をした。しかしその直後に、黒い粒子が集まった縄に二人して捕縛された。転倒もしてしまう。



「がっ! 何をなさいますか!? アソー様!!」

「すいません。今日の用件はこちら様からのお達しです」



 続けてゆっくりと入室したその女に二人の男は愕然とする。



「イザベルか……」

「イザベル様だ! この無礼者!」

「ぐわっ!!」



 テッシモはアソーに頭部を激しく蹴られて失神をした。




 テッシモとアルテッシモは下着1枚の姿にされ、山小屋の裏で木にはりつけられていた。外は雪が積もっている極寒だ。目前にいる女はかつて自分達を拷問していたトラウマそのもの。これ以上ない地獄がそこにあった。



「さて、久しぶりの尋問といこうかしら」

「ふ、ふざけるな! こんな寒い所で話なんかできるか! ごぶっ!」



 反抗したアルテッシモの腹部にイザベルの鉄拳が炸裂した。



「かはっ……かはっ……うぅ……」

「嘘を言えば言うほど惨めに葬ってさしあげますわ。正直に答えなさい。私の夫と息子を殺したのは貴方達なの?」

「しら、知らねぇよ! お前の結婚だなんて、わざわざ調べもしねぇよ!!」

「そう、調べもしないのに遥々レイジにやってくるなんてたいしたものね?」

「だから知らねぇって言っているだろが!」

「貴方、どうやって市長選に立候補したというの? 誰の差し金よ?」

「そんなもの……言えるものかっ!」

「グハァッ!!」



 イザベルは再びアルテッシモに鉄拳を見舞った。彼は吐血していた。



「ま、待て。わかった。ちょっとは話すよ」

「早くしなさい? もうこっちの方は長くもちませんことよ?」

「俺達は女王様のご愛顧で出所したよ。仕事をしたらな、全て大目にみてくれるって言ったのさ!」

「仕事? 女王?」

「おい、全ては話せれねぇよ! 話せばアイツに俺達が殺されてしまうだろ!」

「わかってないのね? 貴方達がここで死ぬか死なないかは貴方が決めないの。私が決めるのでしてよ! このボケナスが!」



 イザベルはその鉄拳を今度はテッシモの頬に見舞った。彼は既にわかっていた。もう自分が生き残る術がここにない事を。だからこそ素直になれる筈もなかった。



「私にも少し動揺がありますわ。貴方達がしてしまったこと、それが女王によって作られたシナリオだとしたら……アソー、貴女にも訊ねなければならない」

「私は何も知りませんよ?」

「ふん、女王の側近でこのザマだ。やるならやれよ。もう怖くとも何ともないぞ! お前の鉄拳制裁なんて!」

「怖くない? よく言えましたわね。嘘おっしゃい! さっきから大嘘ばかりを垂らしている小者風情が!」

「嘘じゃねぇよ! 俺達が死ぬのも全部あのババァの計算のうえさ!」

「強がりを言って! 貴方が私の家族を殺したのは全部知っていますのよ!」

「じゃあ見せてみろ! どこにそんな事実があるのさ! ふふふ、ふふふふ」

「大嘘つきが。貴方の舌は何枚ありますの!? 言ってみなさい!」

「舌? 舌なんて1枚しかねぇよ!」

「また嘘をついて! 何枚も何枚も重ねているのでしょうが!」

「重ねてなんかねぇよ!」

「じゃあ舌をだしてみなさい! ほら! だしてみなさいよ!」



 テッシモはベッと一瞬舌をだしてみせた。



「もっとだしなさいよ!」



 さらにテッシモはベッと舌をだした。その刹那、イザベルの鉄拳が彼の顎へと直撃し、彼は勢いのままに下を噛み切ってしまった。「かはっ……かはっ……」と口から漏れていく彼の吐血と咳、アルテッシモは溜まらず言葉を吐きだした。



「待て! 待ってくれ! テッシモが言った仕事っていうのはさ、アンタの夫と息子を殺せっていう内容さ! ハァ……ハァ……そして! それを命じた人間がキリアン女王だっていう話だ! アンタには申し訳ないと思っているよ! 俺達だって……こ、殺したくなんかなかったさ!」

「そうでしたの。そうでしたのね」

「あ、ああ……本当にすまん……」



 アルテッシモは涙を流し始めた。しかしそれは懺悔からくるものではなかった。そして緩んだその眉間に躊躇ない銃発が撃ち込まれた。続いてテッシモにも1発、その頭部に撃ちこまれた。



「お疲れ様です。ではキリアン邸へ戻りましょう」



 復讐を終えて間もなく、あっけらかんとアソーは話しかけてきた。イザベルはただ頷いて返すだけだ。その後、山小屋は爆発され、二人の政治家は世からその姿を消された。



 イザベルは馬車の窓から見える景色をずっと眺めていた――




 キリアン邸に帰還した折、イザベルはアソーへ土産のワインをキリアンとアヴェーヌに渡すよう頼んだ。その日の晩にワインは渡され、アヴェーヌは口にした。



「!?」



 ワインを口にしたアヴェーヌは驚いた。驚くような味だったからではない。



 思い出したのだ。蘇ったのだ。ずっと心の片隅にあって忘れていたことを――



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