ー第6幕ー
翌日、イザベルは朝早くに起きて、入室を禁じられている部屋へ入室をした。
「ん?」
「アヴェーヌ様」
「誰じゃ其方? 何をしにここに来た?」
「えっ!?」
すぐに駆け付けたテレスと護衛によってイザベルは玄関先に退去させられた。
「困りますよ! 女王様が行くなと言われていたじゃないですか!」
「アヴェーヌ様は私を忘れたのですか……」
「それは僕にはわかりかねます」
「キリアン様ですか? キリアン様がアヴェーヌから私との記憶を……」
「イザベル様」
「え?」
気がつくと、黒刀をイザベルの首筋に傾けるアソーが彼女の背後にいた。
「アソー」
「女王様からのお達しです。貴女は貴女の復讐を成し遂げるのです」
イザベルは溜息をつきつつも、両手を少しあげて頷いた。テレスはやれやれといったポーズをみせて護衛の者とキリアン邸の中へ入っていった。
馬車に乗りアルカリ市へ。暫く無言の空気が流れていたが、イザベルが口を開いた。
「貴女も私のことは忘れましたの?」
「私の記憶は削除されていません。ただ主がアヴェーヌ様であり、アヴェーヌ様の主がキリアン女王陛下であること。それだけが事実です」
「なるほどね。そしたら貴女は何を命じられているのかしら?」
「イザベル様が復讐を成し遂げられよう見守って、助太刀するようにと」
「ふふ、ふふふ」
「何か可笑しいですか?」
「いいえ。復讐は成し遂げますわよ。心配しなくても。ただね、それならね、私から貴女へお願いがありますわ」
「はい」
「私のやり方に一切口出しはしない。そのうえで私のサポート頼めますかしら?」
「そのようなことに文句は言いません」
「いい子ね。ありがとう」
馬車の中での交渉は成功に終わった。




