ー第9幕ー
ラッセルの拷問と殺害を実行した翌日、トリノ近郊にある山奥の酒場にて酒を飲みあかすラボルの姿があった。この酒場は依頼主の配慮でしばらく貸し切りにしてくれるとのことだ。大元のラッセル・ハローズが逝った今、そのシマ一帯はもはや彼の手の内におさめた同然だった。喉に滴る酒の味が旨い。
陽が沈み始めた時刻、ラボルのいる酒場に2人の客が来た。
「お~! これは、これは。ご機嫌麗しゅう? イザベル殿、元祖女神様」
「元祖女神か。面白い看板文句じゃのう」
「お仕事をされてくれたようで何よりです。今日は贈り物を届けにきましたの」
「えへへ~♪ 贈り物ですかぁ? これ以上貰ったらボク飲めないよ~♪」
「ええ、最高の一発をお見舞い致しますわ。どうぞお受け取り下さいな☆」
「え?」
コロンソ・ラボルは眉間の間に銃弾をぶち込まれ、呆気なく絶命した。
「妾の護衛が必要だったか?」
「どうでしょうね? 酔っぱらっていましたしね。貴女の力が必要なのはむしろこれからですわ」
「そうじゃのぉ。その前にここでちょっとばかし飲んでいかぬか?」
「まったく、この飲んだくれ」
時代の流れは一気に逆転して動こうとしていた――




