ー第5幕ー
アヴェーヌ西域を震撼させるマフィア『コロンソ・ファミリー』のコロンソ・ラボルはマフィア本拠地である山奥の酒場で苛立ちを隠さずに酒を飲みあかしていた。今日と言う日になって、どの傘下組織とは勿論、直属の部下とすら連絡が一切とれていないのだ。それも彼が目を覚ましてからという話である。
「まったくよぉ!! どうなっているってンダ!! ゴオラァ!!」
彼は飲み乾した酒瓶を壁に投げつけて割った。
その時に玄関口から一人の蒼白く光り輝く魔人を目にした。
「あん? 何だ? お前?」
「アソー・マロー、ギリー国王の遣いにございます。コロンソ・ラボル様で違いありませんか?」
「おお、大元直属の女神さんか。何だよ? 今俺は何もできねぇぞ?」
「そう、おっしゃらずにどうか、ラッセル様から届け物がございます」
「え? 親分から? こんな時だけど仕方ねぇな」
ラボルは禿げた頭を撫でつつアソーの案内する外へ傘をさして出た。今日は朝から小雨の降る天候だ。
彼が歩き出して見た物、それは絶句にあまる物だった。何百と想像もつかない人間の死体の山だ。それも全て五体バラバラに解体されている。よく見てみれば、顔はどれも見たことあるものだった。ヒンヤリとした黒刀の感触が首にくる。
「コロンソ・ファミリーとされる者はお前を覗いて全て抹殺した。言う事を聞かないならお前もこの場で殺してやろう」
「ま、待て! どういうことだ!? 俺は殺されるしかないと言うのか!?」
「話をよく聞け。言う事を聞けば命ぐらいは保障する。どうするのだ?」
「待ってくれよ! するよ! 何でもするよ! するに決まってンダロォ!」
「それでいい。やることは単純だ。ラッセルを殺しにいくぞ」
「!?」
ラボルは静かな小雨が部下たちの遺体に降り注ぐのを眺めながら「わかった」と静かにうなずいた。




