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ー第5幕ー
リンカーン・バグラーンの死刑執行は終わった。終わったのだ。だいぶ前に。それなのに冷や汗が止まらないイザベルは彼女自身の額を呪うようにしてハンカチで拭き続けた。
「其方、みっともなかったぞ。敵の大将たる女をあんな幼稚な恫喝をもってして、あんなにも味気なく殺してしまうなんて。しかもあの女、笑いおったではないか」
「アヴェーヌ様、経緯などどうでもいいですわ。結果さえあればいいのですわ。私たち国の為政者たる者は皆そうです。それに先の戦であんな沢山の人命を奪った貴女の言う言葉かしらね?」
「ああ……妾もどうかしておるのかもしれん」
「アヴェーヌ様、まだ仕事は残っておりますわよ? 行きましょう?」
「ああ、わかっておる」
彼女達は次の目的地へ向かった――




