ー第2幕ー
時は同じくして、バラグーン大将であるマルシエ・セシルはカドゥラ湖に到着していた。そこで彼は妙な女と出会った。体中が蒼白く光り、召使にしては豪勢な漆黒のドレスで身を包んでいる。腰にさした黒刀も物々しい。すぐに怪しんだ彼は拳銃を彼女に向けた。
「貴様、何者だ?」
「リンカーン・バグラーン様に仕えております魔女のアソー・マローと申します。リンカーン様の護衛につくよう、ドックス・コリン様より命を受けています」
「コリン少将……」
コリンはハックマン中将殉死後に中将となった男だ。バグラーン城の護衛につくよう、部隊に命じたが連絡つかずであった。コリンの部隊は多くの魔女を抱えこんでもおり、なるほどこの女はそれに相応しいなりをしていると感じた。魔法を使っているのか定かではないが、ボートを漕ぐ速さときたら普通の召使のとは別格だ。
「コリンはどうなっているのか知らないのか?」
「はい。私どもも連絡がつきません」
「念のために聴くが、コリン部隊のコードナンバーは言えるのだろうな?」
「はい。C77D413EFK565で違いないかと」
「あい。わかった。疑って悪かったな」
どうやら偽物ではない。マルシエは構えていた銃を下ろした――




