ー第1幕ー
∀・*)戦争の終結にむけて、武闘派参謀イザベルの大活躍はじまるよ☆
バラグーン本陣がアヴェーヌの攻撃を受けていた時、アルマ・デュオン大将は自身の部下であるバクテスの運転する馬車に乗ってデュオン城に到着した。迎えたのはデュオン城護衛部隊の長を務めていたクーシオ・バルサム中将であった。
「アルマ様! よくぞご無事で!!」
「ああ、バクテスが内通していたみたいでな。どうも怪しいと思って尋問したら、案の定吐いてくれてね。いや~ギリギリ死ぬトコだったよ」
「アルマ様、兄は……」
「ああ……残念に思うよ。だけど兄の仇を討ちたいのなら、僕が乗っていた馬車の運転席の奴を仕留めればいい。あの野郎、僕の擁護で生きながられると思っているみたいだからね」
「さ、左様でございますか……ぐううっ!!」
クーシオは唇を噛みしめて肩に掛けていた銃を下ろして馬車に向かった。
間もなくバクテスの悲鳴と銃声がアルマの背に届いた。
「ちょろいものだね」
アルマはデュオン城内に何の躊躇いもなく入城して、国王と王子のいる王室へむかった。王室ではバークレー国王とギリー王子も「よくぞ生き残っていた」と彼を迎え入れた。深々と頭を下げたアルマ、彼は国王と王子に見えないようにしてニヤついた。しかしその数秒後、その頬に冷や汗を垂らすことになる。
「ところでお前、あの戦闘区域にいながら何故傷一つついてないのだ?」
「え?」
顔をあげるとそこにいたバークレーとギリーの表情が一変していた。じっくり見れば見る程にそこには殺気のようなものがついてみられるようだった。バークレー国王は質問を続けた。
「アルマよ、儂らが何も知らないと思っていたのか?」
「な、何を仰いますか国王、僕はあと少しのところでこの命を……」
「お前、何故ここに還ってきた? お前の覚悟とはそのようなものだったのか?」
「あの、父上の仰いますことの意味が僕には全く……グワアアアッ!」
アルマの弁はギリーの銃声によってかき消された。彼の左肩から夥しい血が溢れ、右手でそれを押さえるしか止血の方法は思い当たらない。いや、それよりもまずいのはこの状況そのものである。
「アルマよ、何故お前がバグラーンと内通していたと見破られたかわかるか?」
ギリーが遂にことの全てを述べた。同時にアルマの冷や汗が溢れて髪を濡らす。
「マママママ、待ってくれ! 待ってくれよ! 何かの間違いだ! 僕がそんなの、ウガアアアアアッ!?」
ギリーは次に裏切り者の右肩を撃った。元王子の一人にして元大将の男はしりもちをついてギリーを見上げる。冷たい目をして見下ろすギリーに対して、彼はただ涙を流すしか他なかった。痛みよりも死への恐怖が彼の心を喰いつくした。やがて彼の額に銃がつきつけられた。
「ハァ……ハァ……何故だ? ハァ……ハァ……何故わかったの?」
ギリーは口元をニンマリと歪めて言い放つ。そして彼の銃の引き金を引いた。
「それは貴様がデュオン皇室にあらず。ただのお坊ちゃまだからだ」
死体となったアルマを確認してバークレーはぼやいた。
「惜しい息子だったな。野望は一人前だったが、賢さはハローズ家にもラベルス家にも及ばない。まぁ、生んだ母親が間抜けな女だったからの。その隙だらけの性格も仕方ないと言ったものか」
「国王も随分と隙のある御方で」
「は?」
ギリーはバークレーの頭部へその銃口を向けた。
「さらば元国王。敢えて言おうカスであると」
バークレーが「おい、ちょっ!?」と言っている間に彼の頭は撃ち抜かれた。
ギリーは使用した銃を死んだバークレーに持たせ、ラッセルに無線を入れた。
「やった。お前のほうも頼む」
『承知しました。おめでとうございます。新国王殿』
「ふん」
無線を切り終えると銃声が6発聴こえた。ラッセルが仕事をしてくれたようだ。彼は装着していた手袋を外し、バークレーを抱きかかえて大声で叫んだ。
「おい! 誰か! 誰かおらぬか!! 国王がアルマに撃たれた!!」




