ー第7幕ー
本陣の兵士の人混みに紛れて一人の少年兵がしゃがみ込んでいた。少年は首都南部地域のスラム街で育った貧困な男子だった。軍の兵士として志願すれば食物の配給が貰える。それで志願して貰えたパンを老獪な一兵士に盗まれてしまったのだ。ここ3日ロクなものを口にしてなく、もはや意識が薄らいでいた。軍より授かった短刀で自害をしようかと丁度考えていたところでもあった。
「うわっ!!」
急いで早歩きしている女軍人とぶつかった。やばい。殺される。自殺する前に殺されるとは何たる不運か。彼は恐る恐る上を仰ぎ見た。
「大丈夫ですの!? 貴方、満身創痍でなくて!?」
「あ……う……」
仰ぎ見た軍人は自分を心配してくれたようだ。それどころか、立ち止まって懐から大きなパンを「はい」と優しく差しだしてくれた。貰った瞬間にかぶりつく。そんな彼の姿を見て、女はクスクス笑いながら話をかけてきた。
「腹が減っては戦ができぬですわよ。小さな兵隊さん」
「あ、ありがとうございます!! この御恩忘れません!! あの貴女は……」
「残念、事情あって一般市民の御方に名乗ることはできませんわ。その替わりと言ってはなんですけども、貴方のお名前を頂戴し、生涯記憶に残しておきましょう」
「オス……ハル……ド」
「?」
「オスカル・ハワードです」
「オスカル、素敵な響きですわ! どうかご武運を!」
女軍人は拳をオスカルの前に差し出した。オスカルも拳を差し出し、拳と拳で挨拶を交わした。そして彼女はオスカルの前から颯爽と去っていった。一瞬の出会いであった。しかしオスカルが立ち上がるのには充分に有意義なひと時だった。
漢たちの雄叫びが東域先陣に響きわたる――
アルマの号令によって先陣の突撃が開始したのだ――
戦争はまさに激しく繰り広げられようとしていた――
~第2章終わり~
∀・)第2章終わりまでお付き合いいただき、たいへんにありがとうございました!さぁ、いよいよデュオンV.S.バグラーンの戦争が開始されます。勝利の栄冠を手にするのはどちらか?第3章は明日の12月3日に一挙公開予定です!乞おうご期待を!!




