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ー第3幕ー
リンカーンとオルバーンは実は恋仲にあった。その縁はオズマーン独立抗争に始まっていた。
リンカーンは実のところトリノ生まれであり、デュオン家内縁にあたるカシム家の一人娘だった。しかし社会体制大改革の計画を企てていた父、レンソール・カシムが妻と共に公国不敬罪で軍に捉えられ、処刑された事により彼女の運命は変わった。この時に彼女を庇い保護したのが当時デュオン軍一青年左官であったシーロン・オルバーンだったのだ。
オルバーンはもとよりレンソール・カシムの唱える「民衆から選ばれ民衆から尊ばれる者が世界と国を統治する社会」に大賛同する軍人でもあった。このバグラーン運動におけるドラマが実は一つの悲劇的な歴史から生まれたことを誰も知ってなどいない。知っていたとしても、それは作り話だとされる噂の1つに過ぎなかった。




