ー第1幕ー
バラグーンの首都ハリストンを見下ろす位置に築かれた王城、バラグーン城はトリスの中でも最大級の大きさを誇る建立物であった。10年をかけて築きあげたその城は今の今まで何者にも侵攻されたことがなく、カドゥラ山の麓に凛々しく聳え立っていた。
デュオン公国との開戦を受け、この日バラグーン加盟地域から1名除く19名の中将が大会議室に集った。圧倒的優位が推測される戦に雑談が溢れんばかりに零れていたが、バラグーン軍元帥シーロン・オルバーン将軍とマルシエが入室をするなり即座に静まり返った。
オルバーンは19名の中将を一人一人眺め終えると、その野太く覇気のある声を大会議室中に響かせた。デュオン公国統治だったオズマーン地方から軍を発起させ、一夜にしてオズマーン独立を成し遂げた豪傑こそがオルバーンだった。
「同志よ! 皆も知っているように、デュオンの者達が昨晩宣戦布告をしてきた。このトリスを長きに渡って古の規律で支配してきた古の国、そう、もはや存在をしてもしなくても毒にも薬にもならない奴らだ! そいつらが笑わせることに、アルハ高原にての闘いを機に我が国への統合を判断するかしないかと申してきた。判断をするのは誰だ? そもそも戦争をせずして我が軍の配下にくればいいこと。同志よ、拳を掲げろ! 我が軍はアルハでの勝利を機にデュオン城へも進軍して奴らを殲滅してやろうではないか! そうだろう? 同志よ!!」
オルバーンの雄叫びに続いてバラグーンの猛者達が雄叫びをこだました。
バラグーン軍軍隊はオルバーン将軍をトップに置き、国家参謀も兼ねるマルシエがそれを支えながらも、中将一人が500万を束ねる総1億の大軍であった。対するデュオン公国軍は寝返った軍隊を省いて総2千万にも満たない勢力である。無論兵力にも歴然とした差があり、バラグーン勢には3万の魔女、6万の科学開発関係者を擁し、更にはデュオン公国皇室に内通者をも構えていた。
誰がどう考えても結果の決まっていた戦争。オルバーンが敵の殲滅を叫ぶのも、全くと言っていいほど筋の通った話ですらある――




